生前贈与VS遺言どちらがいいの!?

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。正月休みが終わり一週間が経ちました。今年の正月休みは長かったですが、一週間仕事をしてみてどうでしたでしょうか!?休み明けはつらいですよね!?これから仕事モード全開!と思ったらまた3連休の方も多いのではないのでしょうか。この時期はインフルエンザも流行ってますので、身体のケアをしっかりした方がいいですね。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、親が子に財産を分ける場合に、生前贈与した方がいいのか若しくは遺言で残したらよいのか、どっちがいいのか!?ということをテーマにして書きます。親が子に財産を分ける方法としては、生前に贈与してしまうという方法と遺言を作っておいて相続させるという方法があります。どちらも子に財産を分けるための相続対策ですが、違いはあるのでしょうか!?

生前贈与は判断能力の有無と贈与税に注意

以下の事例で検討してみましょう。

父A、母B、長男C、二男Dの4人家族です。長男Cは、父A所有の土地の上に、二世帯住宅を建ててA、B,Cが一緒に住んでいます。一方二男は、別のところで独立して家を購入し生活しています。Aはそろそろ自分も年をとってきたとので、A所有の二世帯住宅の敷地をC名義にしておきたいと思いました。そこで、生前に贈与した方がいいのか、Cに相続させる遺言をのこしておけばいいのか悩んでいます。

まず、生前贈与。生前贈与とは読んで字のごとく、生前に贈与することです。贈与とはタダであげるということです。親が贈与する意思があって、子が贈与を受ける意思があれば、贈与契約をした段階で贈与が成立します。上記の事例ではA所有の土地を贈与してCはその贈与を受ける意思があれば贈与は成立して、不動産の名義をCにうつすことは可能です。一見、一番いい方法です。何か問題があるのでしょうか!?

注意する点として、まずAの判断能力の問題があります。事例ではAはまだまだ元気でしっかりとした判断能力があり、AからCに贈与したいという意思を表示しているので問題ありません。しかし、実際の実務で生前贈与の依頼を受ける場合、依頼者は圧倒的に子であるCからが多いです。つまり子であるCが父Aが亡くなって遺産分割することになったら普段から仲が悪いDが絶対に反対するに違いない、それなら生前に贈与を受けておけばいいんじゃないか。ということで司法書士に名義の変更を依頼するということが多いのです。このときAはかなり高齢となっていて贈与する意思があるのか分からないということも多いのです。この場合、Aには判断能力がないので、AとCとの間で生前贈与契約をしても契約は無効となります。そのため、生前贈与を受けるにはまず、本当に贈与する意思があって、贈与ということが分かっているのかについて判断する能力があるのかどうか確認しなければなりません。

注意点2として、贈与税です。贈与税は相続税の補完税といわれていて、相続が起きる前にすべて生前贈与して相続税を免れようとすることを防ぐためにあります。そして、贈与税は相続税より税率が高いです(正確には、最高税率は同じくらいですが、贈与する金額が少なくても高い税率がかけられます)。そのため、なかなか贈与できないという方が多いのが実情です。ただし、親子間での贈与であれば、一定の要件を満たせば、相続時精算課税制度という制度を利用して贈与税を負担しないで贈与できる場合があります。相続時精算課税制度は2000万円の範囲内であれば、相続税がかからない方には有効な方法ですので、ぜひお勧めです。ただし、相続時精算課税制度を利用すると暦年贈与(年間110万円までの非課税)ができなくなります。また、相続税が実際にかかるような家庭であれば、効果はほとんどないでしょう。メリット、デメリットを考えながら検討しなければなりません。

遺言は遺言無効のリスクと遺留分に注意

上記の事例でAがCに土地を相続させる遺言を生前に作っておくということも有効な相続対策です。但し、注意が必要な点があります。

まず、一つ目は、遺言という方法ですので、二男Dとしては遺言が無効であったと言いやすいということです。生前贈与は生前に契約をするので、その契約が無効だったということはなかなか言いにくいのですが、遺言の場合は、「Aに書かせたのではないか!?」とか「Aが遺言を作成する段階では判断能力がなかった!」など遺言の無効を争う材料が多いです。また、遺言は厳格な要式で作成しなければ無効になってしまい、名義変更ができないというリスクがあります。一方贈与契約は口頭でもよく、契約書も特に書き方などがあるわけではありません。せっかく、遺言を作ったのに、結局それが使えない遺言で名義変更ができなかったということもよくあるのです。

注意点2としては遺留分があります。遺留分を侵害する遺言も有効ですが、上記の事例ではDがCに対して遺留分減殺請求(遺留分として金銭を要求するなど)をしてくる可能性があります(ただし、贈与であっても遺留分減殺請求の対象となります)。

生前贈与、遺言どっちがいい?

それでは、結局生前贈与、遺言どちらがいいのか?ということですが、正解はありません。どちらもメリット、デメリットがあります。私的には税金問題がクリアできれば生前贈与を選択してもよいかなと思います。生前贈与は、必要な財産のみを贈与することだけを考えればいいですが、遺言は全ての財産の分配を考えなければなりません(厳密には特定の財産の分配のみの遺言も作れます)。遺言というマイナスなイメージもあるので、生前贈与の方が親にも話をもっていきやすいかと思います。ちなみに、実際に名義変更する場合の登録免許税は贈与の方が相続よりも税率が高いです。

まあ、絶対に相続の時にもめるとういことであれば、税金を払ってでも生前贈与を選択してもよいかもしれません。

似たような制度としての死因贈与

生前贈与、遺言の中間的な方法として死因贈与契約というものもあります。つまり、生前に親子間で贈与契約をしますが、贈与の効力が発生するのは親が亡くなった時にするというものです。生前に贈与契約はしますが、効力は生じませんので、贈与税はかかりません。また、契約ということで単独でする遺言よりは争ってくるポイントは少ないかと思います。死因贈与契約をする場合も要式はきめられていませんが、公正証書にしておくことをおすすめいたします。

以上のとおり財産を分配する方法としては様々な方法が考えられます。一人一人の家族構成、家族関係、税金問題など総合的に判断して、選択していかなければなりません。

上記のようにお悩みの方はぜひ、当事務所までご相談ください。