会社を継がせたい~種類株を活用した事業承継~

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。ゴールデンウィーク明けの今週はどうでしたでしょうか!?休みが長く続き休み明けの初日はつらかったのでは!?今年は比較的短い休みでしたので休みボケもひどくならなかった方が多いでしょうかね。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、前回の話ででてきている事業承継についてです。前回までは事業承継の方法、特に信託を利用した方法を紹介しましたが、今回はその根本となる事業承継について説明し、会社法で定める種類株を活用した事業承継についてお話ししていきます。

事業承継は後継者選びから

会社を経営されている方が抱える問題、それが承継問題です。会社は健全であれば何十年、何百年と生き続けることができますが、経営者本人は人間である以上、いつかは亡くなってしまいます。会社が続いていれば必ず発生し、また突然起こる危険がある問題なのです。また、現在は高度成長期を駆け抜けた中小企業の経営者に衰えがくる時期になり、この事業承継がうまくいかないと日本経済にはかりしれないダメージとなります。ご存じのとおり日本企業の9割は中小企業であり雇用を占める割合も7割に達します。この事業承継がうまくいかなければ多くの失業者をだしてしまう可能性があり、実は早急に対応しなければならない問題といえます。

そこで会社を次世代に繋げるために事業承継を行うわけですが、事業承継の前提として必ず必要なのが会社経営の後継者です。会社にとって継がせたい人材がいるか否かが問題です。その後継者は経営者の子どもなのか、親族なのか、従業員なのか、はたまた別の第三者なのか、これをまず考えることから始まります。そして、適切な後継者がみつかったあと、その後継者が会社を継ぎたいという意思があるか否かということもハードルとしてあります。会社と後継者との間での意思の合致は欠かせませんからね。つまり、事業承継はまず後継者選び、そして経営者と後継者の意思の合致から始まります。

このように経営者は、この後継者が財産を継ぐ、人材を継ぐ、技術を継ぐ、理念を継ぐ、すべてを総合的に引き継ぎかつ発展させることのできる人物なのかを見極める必要がありますので、この後継者選びには慎重な判断が必要となるでしょう。

会社を継がせる方法

そして、後継者が決まれば、あとは「継がせる」方法を選択していくことになります。そこで、前回まで遺言、種類株、そして信託を活用した事業承継についてお話をしてきましたが、今回は種類株式にスポットをあててみます。

まずは、会社を継ぐ方法とはどのような方法でしょうか!?株式会社であれば、まず過半数以上の株式を取得することでしょう。なぜなら株式会社での決議は過半数の賛成をもって決定することが多いからです。しかしここで少し注意しなければならない点として、株式会社の決議に必要ななのは、保有株式の数ではありません。重要なのは、「議決権」です。いくら株式をもっていてもそれが無議決権株式ではしょうがないからです。

したがって、後継者にどれだけ「議決権」を集中できるかが承継時のポイントになります。そこで、後継者飲みに議決権のある株式を与え、経営にタッチしない一般株主の議決権は制限しその代わりに配当を優先的に渡すように種類株式を設計し手当することが考えられるのです。

それでは、後継者にしたい人物がまだ経営者として経験不足で未熟である場合はどのようにしたらよいでしょうか!?このような場合は、後継者に少しだけ株を取得させたうえで、一時的に中継ぎ経営者を投入し残りの株を「取得条項付株式」としてその中継ぎ経営者に取得させる方法が考えられます、取得条項付株式を設計することによって、後継者に経験が備わったときに会社が中継ぎ経営者から株式を買い取り、本来の後継者の議決権のみが残るようにすれば、適切な時期に議決権の集中を図ることができます。

また、経営者が拒否権付株式をもって後継者の監督をする方法も考えられます。つまり大部分はませてもよいが重要な局面ではまだ任せられないという場合、経営者が1株だけ拒否権付株式(黄金株のこと)をもつことに設計します。こうしておくことで、後継者に議決権を集中させたうえで、会社の重要事項については経営者が拒否権を発動できるようにしておくことで、後継者が成長するまで監督することができます。ただ、新経営者が萎縮しないように気を付けた方がよいでしょう。

なお、この拒否権付株式、いわゆる黄金株について気を付けるべき点があります。たった1株で決議を否決できるため、例えば拒否権付株式をもつ株主が認知症になった場合や死亡して相続が発生した場合に問題がおこりえます。強力な株式であるため使う人によっては会社の脅威になるということです。この対策としては、拒否権付株式を取得条項付株式にしておくことです。そうしておけば認知症や相続が怒った時に会社が株式を取得できるようにできるわけです。

以上話してきたとおり、種類株式のデメリットも当然あります。例えば、株式の種類が複数になるために複雑化することがあります。また、種類株を設定すると登記事項となるため商業登記簿謄本に内容が記載されてしまい公になってしまいます。つまり、拒否権付株式の場合であれば「後継者はまだ未熟なのか」と外部の人に思われたりする可能性があるのです。

次回は、後継者の中でも子どもを後継者にすることにしぼってお話ししたいと思います。