遺言で尊厳死宣言する!?

こんにちは横浜の司法書士の加藤隆史です。学生さんは今日から夏休みという方も多いでしょう。私が学生だったのは10年以上前のことですので長期休暇というのは懐かしい感じがします。当事務所は本年もお盆休みはなく通常営業しますので、何かご相談がございましたらお気軽にお問い合わせください。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、尊厳死です。聞いたことがない方も多いでしょう。文言でだいたいイメージはつくかと思いますが、尊厳ある死を宣言することです。近年、遺言の中に尊厳死宣言をいれていくこと、また別途に尊厳死宣言公正証書を作成する方が増えてきています。人の死は絶対に避けられないことです。その死をどのような形で迎えるのか議論がでてくるところかと思いますが、今日はこのテーマでお話ししたいと思います。

尊厳死とは

尊厳死とは、傷病により「不治かつ末期」になったときに、自分の意思で現代の延命医療技術がもたらした過剰な延命措置を中止し、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えることであると定義されています。つまり、医師等から余命宣告されたり、もう治らないと伝えられた後に、延命のために過剰な薬の投与、装置の装着などをせずに、人間としての尊厳を保ちながら死を迎えるというものです。ここで「人間の尊厳」として具体的にどのようなことなのかは人それぞれ考え方が違うと思いますが、とにかく延命だけの措置を拒否するということです。

延命措置については基本的に本人の意思を確認すべきです。しかし、すでに本人が意思表示をできなくなる場合もあります。この場合、多くは家族が延命措置をするか、否かについて判断しなければなりません。前もって本人が家族に伝えているならまだしも何も伝えられていない家族がそのような判断を強いられるのは相当の負担でしょう。さらに、家族もいない場合は医師が判断をしなければなりません。そのような場合、どのように判断したらよいか分からなくなります。そのために、尊厳死を希望する場合は、あらかじめ書面にて意思表明するのです。

遺言で尊厳死宣言するか

上記について尊厳死の意思を表明するために2つの方法があります。まず公正証書遺言の中で尊厳死を宣言するのです。例えば、下記のような文言となります。

遺言者は、遺言者の傷病が不治であり、かつ死が迫り、生命維持装置なしでは生存できない状態に陥った場合に備えて、遺言者の家族、縁者並びに遺言者の医療に携わっている方々に対し、次の要望を宣言する。

なお、この宣言は、遺言者の精神が健全な状態にあるときに本件遺言の作成とあわせて公正人の面前で行ったものである。したがって、遺言者の精神が健全な状態にあるときに遺言者自身が撤回する旨の文書を作成しない限り有効である。

  1. 遺言者の傷病が、現在の医学では不治の状態であり、すでに死期が迫っていると診断された場合には、ただ単に死期を引き延ばすためだけの延命措置は一切行わないこと
  2. ただし、前条の場合、遺言者の苦痛を和らげるため、麻薬等の適切な使用により十分な緩和措置を行うこと
  3. 遺言者が回復不能な遷延性意識障害(持続的植物状態)に陥ったときは、一切の生命維持装置を取りやめること

上記の例のとおりとなります。

ただし、遺言で尊厳死宣言する例はあまりないかもしれません。というのは、尊厳死の宣言は遺言者の死亡前にその効力が問題となるため、遺言では対応できないからです(遺言は遺言者の死亡後にはじめて効力が生じるため)。さらに、遺言者が死亡する前に遺言の中身を確認するため、尊厳死宣言だけでなく遺言事項を遺言者及びその家族以外の者にも明らかになってしまうおそれがあり、遺言者及びその家族のプライバシーが侵害されることもあるからです。

そこで、遺言とは別途に尊厳死宣言公正証書を作成することが多いです。この話の続きは次回のコラムにて。