初めて相続を経験される方へパート6~遺産分割協議書の作成から名義変更へ~

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。あっという間に5月もラスト1週間。時間が過ぎるのが早いですね。今年の事業計画で決めていることもありますのでスケジュール管理をしながら進めていきたいと思います。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、初めて相続を経験される方向けのシリーズでお伝えしていますが、今回は、遺産分割協議書の作成、名義変更です。つまり、相続によって、亡くなった方から相続した方の名義に変更することです。前回までは遺産分割協議の話でした。遺産分割協議が相続において一番大きな山場となりますが、その後の遺産分割協議書の作成にも注意する点が多くあります。その点をおさえていただければとおもいます。また、その後の名義変更も意外と大変です。名義変更は相続財産の種類だけ手続きをしなければなりません。例えば、不動産、預貯金、株式、車、ゴルフ会員権などです。また、それぞれ必要書類や手続きの仕方が異なりますので、その名義変更の申請先とやりとりしなければなりません。名義変更は相続において最終目的となりますので、しっかり手続きしましょう。

遺産分割協議が終わったら遺産分割協議書の作成

まず、名義変更の話に入る前に前回の遺産分割協議が成立した後についてお話しします。遺産分割協議が成立した後、遺産分割協議書を作成しなければなりません。遺産分割協議書には様式に決まりはなく、誰がいつ誰の遺産を相続したかを書面に表し、相続人全員が署名、実印で押印すれば完成です。遺産分割協議書の様式に決まりはありませんが、インターネットで検索すれば山ほどひな型がでてきますので、そちらを参考に作成してもよいかもしれません。そして、通常1枚の協議書に相続人全員がそれぞれ署名・押印していくようになりますが、相続人同士が遠方で人数が多い時など郵送によりやり取りしなければならないので、手続きに時間がかかり非常に煩雑です。そのため、「遺産分割協議証明書」という形式で、遺産分割協議がこのように成立しましたということを証明しますという内容で、それぞれ1枚ずつ相続人に署名・押印してもらうという方式もとれます。この場合相続人がそれぞれ1枚の証明書に署名・押印すればよいので、持ち回りで署名・押印する手間がかかりません。

また、遺産分割協議書には個人の実印を押印します。そのため、印鑑証明書をつけて印影を照合できるようにしなければなりません。そのため、実印の押印が不鮮明ですと印鑑証明書と照合できないため名義変更等の手続きができません。印鑑証明書と照合できるようにしっかり押印して、少しでも不鮮明であれば空いている箇所に押印し直しましょう。

遺産分割協議書の内容の注意点

遺産分割協議書では内容が非常に重要です。財産の表記の仕方も注意が必要です。例えば、「○○銀行の普通預金の内長男500万、長女300万円を相続する」という表記は決してしないでください。その銀行の普通預金が800万円ということが分かっていても、預金解約時に利息等により数字が少し異なる可能性があります。その場合、その若干異なる金額については、誰が相続するか決まっていないので下手したらまたその端数分の分割協議をしなければならなくなります。上記のように定めるのであれば、「長男3分の2、長女3分の1の割合で相続する」などのように割合で表記しましょう。また、端数分の処理についても書いておくとベストです。

さらに、もっとも重要なのことが、「遺産分割協議書に記載していない財産の扱い」です。つまり、遺産分割協議時点で把握していなかった財産が後から発見、分かることもあります。その場合、また分割協議をしなければならないと大変です。特に相続人同士で揉めて解決したというケースの場合は、また新たな財産のために話し合いをしなければならないなんてことになりましたら目もあてられません。そのようなことがないように、「本遺産分割協議書に記載していない一切の遺産は長男が相続する」などのように一文いれておきましょう。この場合は、後で財産が発見された場合でも遺産分割協議をやり直す必要はありません。

あと、また次回以降にお話ししますが、名義変更手続きを見越して、「相続人代表者」を遺産分割協議で定めておくとあとで便利ですので、その定めをおくことをおすすめします。つまり、相続人代表者が手続きを行うということに他の相続人が同意してくれれば、名義変更手続きが簡略化されるところもあります。

相続による名義変更は意外に大変

そして、名義変更に移っていきます。法律的な解釈からいえば、遺産分割協議が成立すれば、名義変更手続きをしなくても、その協議で定めたとおりの法律関係が生じます。つまり、遺産分割協議でAが相続することに決定したら、亡くなった方からA名義に変更手続きしなくても、法律上はAが所有者ということになります。しかし、名義変更しなければ次にその財産を売却したり利用したりすることが基本的にできません。そのために、名義変更手続きは相続において最終目的であり、名義変更の完了が、相続の完了となるのです。

また、冒頭で書きましたが、名義変更は財産の種類によって手続きが異なります。司法書士が主に手続きする不動産の相続登記、これは法務局で登記申請することで名義変更できます。また、預貯金なんかは、金融機関ごとで必要書類や書類の有効期限などが異なりますので、注意が必要です。また、株式の場合は、それを相続する人が同じ証券会社の口座を開設しなければならない等、様々な手続きが必要なります。

名義変更は決まった内容を手続きするだけと思っていると意外に苦労されるかもしれません。ただ、名義変更が完了すれば相続手続きも完了といえますので、最後のがんばりどころです。

では、次回以降に詳しい名義変更手続きの話に移っていきます。