預貯金の分配を定める遺言書の書き方

こんにちは。司法書士の加藤隆史です。
「コラム 相続・遺言のポイント」の第2回目は、遺言書における預貯金の分配の書き方について、取り上げます。

遺言書の記載方法

次の事例において、預貯金の分配を内容とする遺言書を作成する場合、下記A、Bのいずれの記載方法が適当でしょうか。

事例

父、その妻、長男、長女、二男の5人家族の場合で、父に1,000万円の預金がありました。今回、父は、その預貯金を家族に残す遺言書を作成します。

A.遺言者(父)は、下記預金について、母に700万円、長男に100万円、長女に100万円、二男に100万円を相続させる。
B.遺言者(父)は、下記預金について、母10分の7、長男10分の1、長女10分の1、二男10分の1の割合で相続させる。

Aは、具体的な数字を記載する方法、Bは、相続する割合を記載する方法です。

結論として、上記A、Bの記載方法では、Bが適当であるといえます。

Aの問題点

父には遺言書を作成する時点で、1,000万円の預金があるので、一見Aの記載方法でも問題ないかと思われます。
しかし、遺言者である父は、これから先、何十年も元気で過ごし、預金を使い切ってしまうかもしれませんし、逆に、投資や資産運用により、預金が増えることも考えられます。つまり、1,000万円という預金額は、遺言書を作成する時点の金額であり、遺言者である父が死亡した時点では、預金額が変わっている可能性が高いということです。
以上を踏まえて、例えば、父が死亡した時点で預金が500万円に減っていた場合について考えてみます。
Aの記載方法では、1,000万円を基準にした定め方のため、結局、遺言どおりに分配ができないことになってしまいます。500万円につきBと同じ割合で相続させるという内容に読み替えることも考えられますが、実務上、金融機関がそのように読み替えてくれる保障はありません。金融機関ごとに解釈の仕方が異なるので、一方の金融機関は認めてくれて、他方の金融機関は認めてくれないということも起こりえるでしょう。
次に、預貯金が1,500万円に増えている場合を考えます。
Aの記載方法では、1000万円については、遺言書どおりの分配が可能ですが、増加した500万円については、遺言書に定めがないので、結局相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。実務上、遺言を定めておけば、遺言がない場合に比べて相続手続きについて簡易・迅速に行うことができます(詳細については、次回以降のコラムで述べます)。そのため、Aの記載方法では、遺産分割協議を行う必要があるため、遺言を定めておく上記のメリットがなくなってしまいます。

そのため、預貯金の分配方法を定める場合、Bのように相続する割合で定めておくことをお勧めします。Bの書き方であれば、預貯金に変動があっても死後の遺言執行が可能です。

このように、遺言書というのは単に作成しておけばよいというものではなく、死後の財産分配が、確実に行えるような書き方をしていかなければなりません。
解釈が出てきてしまう表現や、特定できていない書き方では、実際にその遺言に基づいて分配ができないという事態が起きてしまい、遺言者の最終の意思が実現されません。

当事務所では、このような問題が起こらないように、的確なアドバイスを行い、遺言書作成のサポートをさせていただきます。