相続対策、投資のため国外で資産を保有するリスク

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。今週は連休ですね。来月は年末で忙しいし今年ゆっくりできる最後の連休かもしれませんね。連休の方は楽しんでお過ごしください。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」のテーマは資産を国外で保有する相続対策においてリスクを考えなければならないということについてお話しします。現在、国税庁の発表では、日本人が国外に約2兆5,000億円の資産を国外で保有しているらしいです。また、そこには在外居住者や5000万円未満の財産は入っていませんので、上記金額より多くの資産を国外で保有されています。その主な理由はやはり節税、相続税対策ということでしょう。その辺りの税法上の仕組みのお話しは税理士さんの分野となりますので私からは詳しく説明しませんが、主に税のために国外で保有しているようです。また、投資関係で利回りが有利という理由で国外で保有する方もいらっしゃいます。しかし、単に節税や投資だけのことを考えて資産を国外においておくと相続時に思いがけない苦労が待っているかもしれません。

国外で保有している資産の相続

国外に資産を保有している方が亡くなったときに相続がおきます。そこでまず考えなければならないのが、相続法について日本の法律が適用されるのか、財産地の法律が適用されるのか調査する必要があります(準拠法の問題)。そのとき、相続法が財産地の法律が適用される場合はその法律について詳しく知る必要があります。さらに仮に相続法が日本の法律つまり民法が適用される場合であっても、相続の手続きに関する法律は財産所在地の国の法律が適用されることがほとんどです。日本には外国にある財産の相続手続きをサポートできる専門家が少ないため、どこに相談したらも分からずいつまでたっても相続手続きができない、資産を自由に使えないということがおきてしまうのです。そのように考えるとせっかく生前に税金対策、資産を増やすための投資ということで国外に資産を移したりしてしまうと相続時に相続人に苦労させてしまうかもしれません。

プロベートは高額な費用がかかり長期間時間がかかる

しかも、アメリカやイギリス、シンガポールなどの英米法(コモンロー)が適用される国は、日本のように相続財産が当然に相続人に権利移転するという考え方になっていません。それらの国では、プロベート(検認裁判)という手続によって、財産を相続(清算)することになるのです。つまり、財産を保有している方が亡くなったときに、一旦遺産財団(エステート)を形成してプロベートという手続きにより、プラス財産からマイナス財産(負債)を弁済し残余財産が生じてはじめて相続人に分配されることに案ります。そのとき一般的にプロベートを申し立てる弁護士の費用や遺産管理人の報酬・実費等が高額になることが多いです。また、プロベートの手続きは相当時間もかかります。3年以上かかることもありその間資産を使用できなかったりデメリットも多いのです。

国外に資産を保有する場合は相続のことを考えておく

このように国外に資産を保有している方がそのまま亡くなってしまうと遺された相続人にとても苦労をかけてしまいます。そのためにまずは最低限、遺言を遺しておく必要があります。ここでの遺言とは日本の法律による方式で作る遺言より財産地の国で作成したほうがよいでしょう。具体的には日本で遺言案をつくっておいて財産地の国の法律専門家にサポートしてもらうという方法です。なぜなら、遺言をつくっておいても上記のプロベートの手続き自体は省略できないため、現地の国の方式で作った遺言の方がスムーズに手続きが進むからです。

プロベート自体を省略する手法としては、主に財産を共有にしておくとか生前信託するなどの方法があります。現にアメリカ等ではほとんどそのような対策をしているようです。

以上のとおり、税金のことや資産を増やすことの他、相続時の手続きや費用のことなどトータル的に考えていないと結局損をすることになります。大きな視点をもって相続対策することをおすすめします。