信託口座の開設が家族信託を普及させる!

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。あっという間に1月が過ぎましたね。1月も当事務所はフル活動でした。本当にありがとうございます。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、信託口座の開設が家族信託を普及させるというテーマです。当事務所にも家族信託に関するご相談・お問い合わせが増えてきました。相続ブームといってもいいくらい、一般の方でも相続の話をされる機会が多いのではないかと思います。一歩踏み込んで調べて家族信託というのを知るという方が多いようです。しかし、家族信託というのは世に普及しているとはまだまだ言えないでしょう。普及するカギは「信託口座の開設」だと思います。

家族信託とは

本コラムで家族信託について度々とりあげていますので、以前からのコラムを読んでいただいてる方はご存じかもしれません。家族信託とは財産管理の方法で、委託者(親)が受託者(子)に財産をうつして、受託者が財産を活用・運用してその利益を受益者(親)に享受させるというものです。一般的には民事信託と言われているもので、家族信託とは家族間で信託を行うのでそう呼ばれています。家族信託の特徴は、受託者が財産を活用・運用しやすいというところでしょう。もちろん契約上活用・運用を制限することもできますし、そもそも信託の目的に反することは許されません。しかし、財産の名義が受託者にうつるので、運用・活用・処分がしやすいのです。代理や委任では財産の名義はあくまでも本人ですので運用・活用・処分が難しいこともあります。特に信託と比較される成年後見制度では家庭裁判所が監督者であり、本人の資産を活用・運用することには慎重です。成年後見では本人の福祉のために財産管理を行うため本人の財産など運用することが原則できないのです。株式などもそのまま保有せず売却して金銭で管理するという後見人の方も多いです。

このように信託は委託者の財産の名義が移るということが最大の特徴で、多様化する社会で信託を利用する場面というのは確実に増えていくでしょう。

家族信託の実務

上記のように家族信託はとても便利なスキームです。しかし、実務では家族信託が利用される場面は少ないです。なぜなら、実務の運用が追い付いていないからです。特に信託口座の開設は問題です。信託する財産としては不動産と預貯金・金銭が多いです。不動産は不動産登記制度により「信託登記」というものが認められているため、第三者に公示することができます。一方預貯金については、信託口座の開設がなかなかできません。つまり、銀行等の金融機関では家族信託・民事信託という制度を知っている方がほとんどいないためです。もちろん専門の相続部門等では家族信託について知っていると思いますが、実際に口座を開設する支店では知っている方がいないのが現状です。信託銀行に投資するための信託口座と勘違いされてしまうケースも多いです。

信託口座の開設が家族信託を広める

信託口の口座を開設することができれば、法令で定めているとおり信託財産を守ることができます。現状では、「受託者」という屋号という扱いで記載されるだけですので、あくまで受託者個人の口座という扱いを受けてしまいます。そうしますと、受託者の債権者が信託口座として運用していた口座について差押えしてしまうということもあるでしょう。法令では倒産隔離機能といって、信託口座は、委託者または受託者の個人口座とは別の口座という扱いを受けますので、委託者または受託者の債権者は信託口座を差し押さえることは原則としてできません。そのような信託口の口座の開設はほとんどの銀行では対応していません。

信託口の口座開設が普及すれば家族信託自体が普及するのは間違いないでしょう。成年後見制度のときと状況が似ていますが、金融機関でスムーズに対応するには時間が必要かもしれません。しかし、この家族信託という制度は非常に使い勝手が良い財産管理の方法です。法律専門家としては実務の運用がスムーズにいくようになってくれることを願っています。