胎児は相続人になることができるのか

こんにちは。司法書士の加藤隆史です。私事ですが、今年の3月に長男が誕生しました。とてもかわいい息子で、息子の笑顔をみると疲れもふっとびます。今回のコラムでは、まだ誕生する前の胎児に相続権があるのかがテーマです。実務上は、めったにお目にかかれない案件ですが、法律的にはどのように解されているのでしょうか。

胎児の相続能力

相続人となりえるには相続開始時、つまり亡くなった日に「人」として存在していなければなりません。民法3条では、「私権の享有は、出生に始まる」と規定していますので、そのまま法解釈をすれば、相続開始時に胎児であった者は、相続能力がないことになります。しかし、出生が早いか遅いかで相続できるかどうか左右されるのは、公平に反するという考え方により、民法886条では、胎児については、「既に生まれたものとみなす」としています。つまり、胎児であっても相続する権利が認められていることになります。ただし、胎児が生きて生まれてくることを前提としていますので、胎児が死体で生まれたときは適用されません。ちなみに、相続する権利の他にも、不法行為による損害賠償請求権遺贈を受ける権利なども胎児には認められています。

胎児がいる場合に、遺産分割をすることができるか

事例 夫Aが死亡し、妊娠中の妻Bと子Cがいる場合に、胎児の出生前に遺産分割をすることができるでしょうか?

胎児の相続について「既に生まれたものとみなす」という意味について、以下の2つの説があります。判例・通説は、1の停止条件説としています。

  1. 胎児である間は、相続能力はなく、胎児が生きて生まれることを条件として、相続開始時に遡って相続能力を取得すると解釈する説(停止条件説)
  2. 相続開始時と同時に相続能力を取得し、胎児が死体で生まれたときは、相続開始時に遡って、相続能力を有しなかったものと解釈する説(解除条件説)

事例に戻り、1を踏まえると、胎児を除外して遺産分割を行うことになります。胎児が出生した場合には、価額のみの支払請求権を認めます。胎児中の遺産分割については、胎児は1人とは限らず、死産の可能性もありますので、胎児を含めて遺産分割協議をすることは難しいのです。このようなケースでは、胎児が生まれてくるのを待って、遺産分割することがよろしいかと思います。

不動産登記の実務では

上記事例の場合で、胎児が不動産を取得する遺産分割協議が整ったときに、相続登記の名義は「亡A妻B胎児」となります。胎児が生まれた場合は、その子の氏名と住所を登記上明らかにする必要がありますから、「年月日出生」を登記原因とする登記名義人氏名・住所変更登記を行うことになります。双子の場合や死亡して生まれたときには、相続登記を更正します。