遺産分割について③

こんにちは。司法書士の加藤隆史です。今回の「相続・遺言のポイント」のコラムは、遺産分割協議書について書きます。遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産分割した結果を証明するために残しておく書面です。共同相続人間で遺産分割協議が成立した場合、法律上、書面を作成しなければならいという規定があるわけではありませんが、一般的には、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・実印で押印します。

遺産分割協議の方式

遺産分割協議の方式については、特別に決まった方式はありません。相続人全員が一堂に集まって協議することがベストですが、必ずしも一同に集まる必要はなく、例えば相続人の内の1人が原案を作成して持ち回り、全員の承諾を得る方法でも可能です。登記の実務においても、各相続人が遠方に住んでいるため、一堂に集まることが難しい場合でも、遺産分割協議の内容を記載した同一の書面を相続人の数だけ作成し、各自が署名押印した各別の書面(遺産分割協議証明書)をもって遺産分割協議書とすることができます。また、例えば、内容が同じである相続人ABCの遺産分割協議書と相続人DEの遺産分割協議書の2通を相続登記の申請で添付しても登記が受理される扱いとなっています。

遺産分割協議書の重要性

最初に書きましたが、遺産分割協議書は法律上、作成することを要求されているわけではありません。しかし、相続の実務では、あらゆる場面で遺産分割協議書が必要となってきます。例えば、相続登記のために法務局へ提出したり、預金の解約のために金融機関に提出したりします。そのため、遺言がある場合を除き、遺産分割協議書は、相続手続きにおいて必ず必要なものといえます(単独相続を除きます)。

遺産分割協議書には、相続人全員が署名し、また実印で押印しなければなりません。そして、必ず遺産分割協議書にセットで印鑑証明書の提出が必要となります。つまり、相続人の実印の印影と印鑑証明書を照合し、相続人が本当に遺産分割の内容を承諾しているかを確認するからです。登記実務では、実印の押印で印影が少しでも欠けている場合に印鑑証明書との照合ができないということで、押しなおしを要求されることもありますので、特にある相続人から押印してもらうことが難しい場面(例えば、相続人同士が遠方に住んでいる場合や相続人間で争いがあり、ようやく協議が成立した場合など)では、印影がはっきりうつるようにしっかり押印しましょう。

遺言の必要性

上記のように相続の手続きにおいては、原則として遺産分割協議書が必要となりますが、協議が整わなければ、遺産分割協議は成立せず、いつまでも遺産分割による相続手続きがとれなくなります。また、相続人同士で同意ができても、協議書作成や押印の手間もかかるかもしれません。そのためにぜひ遺言の作成をお勧めします。遺言を作成しておくことで、遺産分割協議書の提出なく相続手続きを行うことができます。具体的には、不動産の相続登記においても、遺言による方法では、遺産分割協議書の提出は必要ありません。さらに、遺産分割協議書による相続登記には、相続人が他にいないことを証明するために、被相続人の出生から死亡までの除籍謄本・改製原戸籍謄本などすべて取得しなければなりませんが、遺言による相続登記には、遺言者が死亡した除籍謄本と、遺言により遺産を取得する相続人の相続関係を証明する戸籍謄本のみで足ります。やや難しいかもしれませんが、必要書類が少なくて済む上、相続人全員の同意がいらないので相続手続きが進まないという事態がありません。

次回のコラムでは、相続人が遺産分割協議に反対している場合をテーマにします。