遺言の内容と異なる遺産分割は有効か

みなさん、こんにちは。司法書士の加藤隆史です。忘年会シーズンですが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。私は、今日、今年2回目の忘年会に行ってきます。年末までにあと3回忘年会に参加します。くれぐれも飲み過ぎには注意しましょうね。それでは、コラム「相続・遺言のポイント」、今回のテーマは「遺言の内容と異なる遺産分割は有効か」です。

遺言があるのに、相続人が集まって遺産分割協議をしてしまうということですが、果たして、そのような遺産分割によって相続手続きができるか検討します。

遺言と異なる遺産分割協議は有効

遺言とは、人の最終の意思表示であり、なによりも尊重しなければならないものです。しかし、遺言に相続人以外の第三者に遺贈するような内容がない限り、相続人全員がその遺言の内容を了解した上で、遺言の内容と異なる遺産分割を行っても、不利益になる人があらわれるわけではありません。そのため、実務では、遺言と異なる遺産分割協議は多く行われています。判例でも、原則的にこれを認めています。ただし、遺言で遺産分割協議を禁じている場合や遺言執行者が反対の意思表示をしている場合は、遺産分割を行うことは問題がでてくるでしょう。

遺言に基づく相続登記がされている場合

では、下記の事例を検討します。

事例

被相続人Aが亡くなって、妻B、子C、Dがいる場合、妻Bに不動産を相続させる遺言が見つかりました。そこで、その遺言に基づいてBは単独でB名義に相続登記を行いました。しかし、あとで、子Dがそれを不服に思って、自分も相続したいと文句をいい、BとCは仕方なく、相続人全員で遺産分割協議をすることになり、結局、この不動産はDが単独で相続することになりました。このとき、B名義の相続登記はどのように処理されるのでしょうか?

今回の事例は、私の実務で経験した事例です。登記実務で、遺言に基づく相続登記が終わった後に遺産分割協議を行い、遺言に基づく相続登記を錯誤を原因として抹消してからD名義に相続登記をするのか、もしくは真正な登記名義の回復を原因として、BからDに所有権移転登記を行うのかということです。この件は、事前に登記所にも確認し、どちらでも処理できるということになり、錯誤を原因として抹消してから、D名義に相続登記を行いました。

当該案件では、遺産分割協議には遡及効があり、相続開始時に遡って無効となるため、遺言に基づく相続登記が無効であるという法律構成をとりました(登記原因証明情報にこのような法律構成で記載しました)。遺言と異なる遺産分割協議をしても有効であるということでしたが、遺言に基づく相続登記をした後であっても、遺産分割協議をして、遺言と異なる相続登記をすることができるということです。ただし、この法律構成は、登記先例や質疑応答には載っていませんので、事前に法務局へ確認してから進めるべきでしょう。