長生きのリスクに備える~成年後見編パート3~

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。少しずつ気温があがり春が近づいてきた気がしますね。このまま暖かくあるといいのですが、花粉が少し心配ですね。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、前回に引き続き、長生きのリスクに備える~任意後見編~を解説していきます。前回は、日本の医療が発達して平均寿命も延びてきましたけど、判断能力の低下に対するリスクにも対応していかないといけないことを書きました。その対応方法の一つとしては任意後見です。予め、本人が信頼できる第三者に財産管理を任せ、契約を行っておくことで、万が一本人の判断能力がなくなったときに自身の財産管理を本人の代わりに行ってくれるというものです。

その任意後見の中でも、有効なのが、移行型の任意後見です。前回はここまでお話ししましたので、以下続きを書きます。

移行型の任意後見とは

前回も書きましたが、移行型の任意後見とは、任意後見契約とともに財産管理契約を結んでおいて、判断能力が衰える前にも一定の財産管理を行ってもらい、実際に判断能力が衰えたら任意後見に移行するというものです。なぜ、このような移行型がよく使われるのでしょうか。

任意後見契約は、あくまでも判断能力が衰えた時に後見人に財産管理を任せるというものです。しかし、一般的に任意後見前で判断能力に問題はなくとも身体の不自由により通帳の管理など任せたいというニーズがあります。そのため、任意後見前であっても、本人が望んだ時には、財産管理契約の効力を発生させて財産管理を行い、本人の判断能力が衰えてから任意後見人に移行して財産管理を継続することができます。

さらに財産管理契約前にも一定の範囲で本人を見守ることもできます。これを俗に見守り契約といいます。見守り契約は定期的に本人の様子を伺うというものです。

つまり、移行型とは次の3つの契約を行い、順次移行していくというものです。

  • 見守り契約
  • 財産管理契約
  • 任意後見契約

以上の契約を行っておくことにより、高齢者となる本人にとって、見守り契約により定期的に様子を知らせることができ、財産管理に不安が生じたときには財産管理を頼むことができ、本人の判断能力が衰えた時には、任意後見に移行され、財産管理が引き続き行われるということになり非常に安心できるスキームとなります。

任意後見の落とし穴

以上述べたとおり任意後見の移行型は魅力的なスキームですが、一つリスクがあります。それは、財産管理を行う人の監督です。任意後見に移行されれば家庭裁判所が後見監督人を選任し、その後見監督人が任意後見人の財産管理を監督します。それによって適正な財産管理が担保されるわけです。しかし、見守り契約、財産管理契約の段階では、財産管理を行う人の監督は本人自身が行わなければなりません。そのため、定期的に監督しておかないと不適切な財産管理が行われてしまう可能性があります。

実務上も、財産管理契約に基づき財産管理契約を行っていて、本人に判断能力がなくなってきたにもかかわらず任意後見契約に移行せずにそのまま財産管理を続けてしまうという問題が起きています。これは財産管理を行う人の倫理上の問題となりますが、本人の判断能力が衰えてきたら直ちに任意後見に移行すべきです。監督されるのを嫌がりいつまでも財産管理契約のまま財産管理を行われてしまうと本人に判断能力がなくなって監督ができず、不適切な財産管理が行われてしまうかもしれません。

このような実務上の問題をどのように対応していくのかが、今後の課題になってきます。