新たな相続対策~信託の活用~

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。3月も中盤ですね。この時期は卒業式が多いですね。卒業というと別れをイメージしますが、これから新しいステージに一歩踏み込むということでもありますので、新たな気持ちでがんばってほしいです。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」のテーマは、「信託」です。信託というのは、一言でいうと「財産管理」です。信託は、世間的にまだまだメジャーではありません。信託と聞くと、ほとんどの方が信託銀行をイメージするくらいでしょう。また、信託は税制で不透明なところがあるため現在は使い勝手がいいとはいえません。しかし、様々な障害が解決されれば信託というのは当たり前の存在になりうると私は思います。

信託と相続は関係あるの!?と思われる方も多いでしょうが、信託を利用すると様々な相続対策、また長生きするためのリスクヘッジが可能となります。また、親亡き後問題の解決、障害者の子を持つ方にとっても利用を検討していただける制度となっています。今日はまず信託というものがどういうものか説明していきたいと思います。

信託とは「信じて託す」もの

信託というのは中世ヨーロッパからある制度で、当時は、出征する際に自分の家族を引き続き守るために自分の財産を信頼のおける第三者に頼み、その財産から発生する利益を家族が受けるというものでした。現在も考え方は一緒です。

つまり、信託とは、「信頼できる第三者に自分の財産の管理・処分を委ねてそこから発生する利益を受けること」です。ここで資産を委ねる人(資産の所有者)のことを委託者、その資産を託されて管理・処分する人のことを受託者、信託された資産の収益を受ける人を受益者といいます。このように、信託とは「受益者のために信じて、託す」制度なのです。

信託と代理って何が違うの!?

次に、少し法律的な話をします。信託とは、自分が信頼できる第三者に自分の財産の管理または処分を委ねるといいました。それって「代理」と同じではないか!?という疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。代理というのは民法で定めがあり、本人が他人を代理人として法律行為等を自分の代わりに頼むというものです。その代理人が行ったことは本人に効果が生じます。

この信託と代理、最大の相違点は、信託の場合、自分の財産の所有権が受託者へ移転することです。つまり、信託とは冒頭で書きましたが、「財産管理」の一種ではあるが、その財産の所有権が受託者へ移転するというものです。代理ではあくまで財産は本人が所有し、代理人に所有権は移転しませんよね。少し難しいですが、この点が信託の最大の特徴といえるでしょう。受託者へ所有権が移転することで受託者は自由な財産管理・処分を行うことが可能となります。この特徴はこれから説明することの大事な前提となりますので忘れないでください。

民事信託と商事信託

冒頭でも説明しましたが、信託と聞くと信託銀行を思いつく方がほとんどではないかと思います。信託銀行は受託者となって、ご本人の財産の管理・処分を行い、収益が出た分につき信託報酬を引き、残りの収益を受益者(本人等)に分配しています。まさに信託です。このように、業(継続的に報酬を得て行う)として信託を行うことを商事信託といいます。商事信託では受託者が信託銀行や信託会社となります。政府から免許や登録を受けたプロの信託会社に信託財産の管理・処分を委ねるもので、所定のコストがかかることが特徴です。

一方、本人の家族などの個人が受託者に就任するケースを民事信託といいます。この民事信託とは別名「家族信託」といいます。家族信託では、本人の代わりに家族が財産の管理・処分を行い、本人に収益を帰属させるスキームが多いです。この家族信託では、受託者が家族になることが多いため、司法書士などの法律専門家が信託監督人、受益者代理人に就任するケースもあります。

ちなみに、成年後見と異なり、現在の信託法では司法書士は受託者となることができません。業(継続的に報酬を得て行う)として信託を行う場合、信託業法の適用があり、政府の許可が必要となるからです。

次回以降、具体的に信託を利用した相続、承継対策をみていきます。今日のコラムは具体例がなく分かりにくかった思いますが、信託というのは専門家間でも難しいと言われる制度です。少しずつ説明していきたいと思います。