福祉型家族信託と成年後見の違いとは!?

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。今月に入り雨ばかりでしたが、今日は晴天です。久々ですね。このまま夏に突入でしょうか!?

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、家族信託と成年後見の違いです。どのような制度かということは以前のコラムで紹介しているとおりですが、共通して、「財産管理」の方法として活用されます(家族信託は遺産承継する機能もあります)。家族信託の場合は、家族間で財産を託して、託された人が財産管理等を行いそこからでてくる収益等について受益者に還元します。一方、成年後見は、家庭裁判所が選任した成年後見人が判断能力が衰えた方の福祉のために財産管理を行う制度です。どちらも、家族の福祉のための制度といえます。超高齢化社会に突入している日本では、今後、両方の制度をうまく活用していかなければならなくなるでしょう。本日は、この両制度の違いなどみていきます。

家族信託は様々な場面で活用できる

家族信託といっても、主に生前に「信託契約」するもの、遺言で「信託」するものに分かれます。ここでは信託契約をすることを前提にします。一つ例をあげてみます。

高齢期に差し掛かってきた母は、不動産をもっておりそこから不動産収入がはいってきます。

しかし、預貯金等が少なく将来、不動産の管理が自分でできなくなると生活費の捻出ができなくなるかもしれないという不安があります。

そこで、母は長男に、その不動産を信託して、長男がその不動産を管理・活用し、そこからでてくる収益を母に生活費として渡し、母も安心して老後を過ごせることになりました。

ここでは、不動産を例にあげてみましたが、もちろん預貯金等の金融資産も信託できます。上記の例で、もし、母が将来認知症等で判断能力が低下しても信託はそのまま継続しますので、長男が受託者として不動産を管理・活用することができます。成年後見では、判断能力が低下した場合に成年後見、判断能力が低下する前であれば任意後見を活用してお母さんの財産管理をすることができますが、母の財産を減らすことはできないため最低限度の活用しか認められず、また、大きな財産を動かす時は、家庭裁判所への確認、了承を得てすすめなければなりません。その点、家族信託では、財産活用の幅が広いといえます。ただ、家族信託でも、「信託の目的」を定めますので、その目的、つまり家族の生活の福祉以外の目的で受託者が財産を活用することは許されません。あくまでも家族の生活の安定等の目的のために財産を活用するのです。

家族信託、成年後見の違い

家族信託、成年後見の特徴で最大の違いは、「財産権の移転」です。つまり、家族信託の場合は、財産管理をするために委託者から受託者へ財産権が移転するのです。つまり財産は受託者名義となります。そのため受託者は家族信託に目的にそっていれば、財産を活用できるというわけです。一方成年後見は、財産権自体は判断能力が低下した成年被後見人のままです。そのため、成年後見人の権限・義務は財産管理が中心なのです。その点が大きく違います。

また、成年後見制度では必ず家庭裁判所が監督に入ります。そのため家庭裁判所には定期的に財産管理の状況・結果について報告し、財産を処分しなければならない状況の時は、確認をもとめることが必要です。一方、家族信託では、委託者・受益者が受託者を監督するのが原則ですので、財産管理報告の方法等も契約(または遺言)である程度自由に定めることができます。家族信託でも、信託監督人、受益者代理人などを置くことで一定の監督はすることはできますが、やはり家族信託の方が成年後見よりもある程度自由な裁量というのがあるかと思います。

しかし、家族信託は成年後見に比べると世間的な認知度は低いです。成年後見制度も平成12年当初は世間的な認知度が低く、銀行等での手続きもかなり大変な作業が必要でしたが、現在ではある程度スムーズに銀行手続き等が進みます。ただ、家族信託となるとまだ実務上の取り扱いが確定していないところがありますので、色々と手続きをすすめるにあたり苦労することも多いかと思います。

冒頭でも述べましたが、どちらの制度もこれからの日本を支える制度といえます。両方の制度をそれぞれうまく活用し、また組み合わせて活用すれば、様々な問題に対応できるようになるかと思います。