「相続」が「争族」にならないために
こんにちは。司法書士の加藤隆史です。
当事務所は、平成24年11月に開業しました。皆様にとって、気軽に相談してもらえる親しみやすい司法書士事務所を目指して日々業務を行っていきますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
さて、本コラムは、当事務所で力を入れている「相続・遺言」について、皆様に知ってほしい情報や私が経験した事案を紹介していきます。
第1回目のテーマは「相続」を「争族」にしないためのポイントを皆様にご紹介します。
本テーマには、色々な事前対策がありますが、その1つとして、今回は「遺言」をとりあげます。
「争族」の対策としての「遺言」
親がなくなる前までは、仲のよかった兄弟が、親が亡くなり、相続がおこると、お互い自分の権利を主張し、険悪な関係になり、最終的に裁判上の争いになることがよくあります。これがいわゆる「相続」(そうぞく)が「争族」(そうぞく)になってしまったということです。
今までの私の実務実体験上、このような争いをよくみてきました。
相続による不動産や預貯金等の名義変更を行うには、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるため一人でも、遺産の分割内容に反対すれば、協議が成立することができず、いつまで経っても名義変更ができないことになってしまいます。
そのため、このような争いが起こらないために、事前にできる対策の1つとして、「遺言書」の作成があります。
自分の考えで、自分の財産をどのように子供に相続させるかを遺言で残しておけば、兄弟間で遺産分割協議をすることなく、遺言書に基づき名義変更ができます。
ただし、「争族」にならないためには、遺言書の内容が重要です。内容によっては、より大きな争いを招いてしまうことになります。
事例紹介
簡単な事案を紹介します。
父が3年前に他界して、今回、母が亡くなり、子供3名が母の遺産を相続するケースです。母は生前、同居して世話をしてくれた長女に「全相続財産である自宅の不動産と預貯金600万円を相続させる」内容の遺言書を遺しました。
長女は、遺言書にもとづき、自宅と預貯金を相続しましたが、他の兄弟の長男と次男に遺留分請求(遺留分については、次回以降にテーマとしてとりあげます)を受け、何年間も裁判で争うことになってしまいました。
ポイント
ここでのポイントは、母親としては、それぞれの子供の気持ちに配慮することが必要だったのではないでしょうか。長男と次男にしてみれば長女は同じ兄弟であり、親から不公平な扱いを受けたという怒りが、長女に対する遺留分の請求になったのでしょう。
母親としては、長女の幸せを願って作成した遺言書であったのに、結果として長女を悩ませる結果になってしまいました。
では、母親は、どのような遺言を作成するべきであったでしょうか。
自宅は長女が引き続き住むので長女へ、分割しやすい預貯金の一部を、長男と次男に相続させる内容の方がよかったかと思います。
また付言事項で、長女へ多く相続させた理由を説明した方が、長男と次男を納得させることができたかもしれません(あるいは生前に長女が世話をしてくれているために自宅を長女へ残したいことを長男や次男に説明しておくこともよいかもしれません)。
以下、遺言の内容例です。
遺言内容例
- 長女には自宅と預貯金200万円を、長男と二男には各200万円を相続させる
- 生前に同居して面倒をみてくれた長女に自宅を相続させたい。
長男と二男には少ないが200万円で満足してほしい
今回のコラムは、あまり法律的な内容ではありませんでしたが、事案によって、相続人廃除や特別受益など法的な対策もありますので、次回以降に紹介していきたいと思います。