自死遺族を取り巻く法律問題~いじめ・体罰問題、鉄道事故問題~

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。空気が乾燥するこの季節、そう静電気!私は静電気が苦手なので、家のドアを開けるときなどそうっとドアノブに触れて開けるようにしています。無駄な抵抗ですが、傍からみると奇妙な行動にうつるかもしれません。さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、自死遺族を取り巻く法律問題の3回目で、いじめ問題をとりあげます。いじめについては、説明する必要もないくらい近年も社会問題となっていますよね。いじめにより大切な家族が自死を選択するということも頻繁にメディアで報道されています。自死により家族を亡くした遺族にとって、どのような法律問題がおきるのかについて書きます。また、後半では、駅ホームなどの人身事故といわれる鉄道事故に関する法律問題に触れます。

いじめに関する法律問題

いじめ・体罰については毎日のようにメディアで取り上げられています。もちろん大人の世界でもいじめは問題となっていますが、特に学校でのいじめについては深刻です。つまり、子どもの自死です。子どもの自死は、子どもたちが日々の大半を過ごす学校での生活に何らかの原因があることが少なくありません。具体的には同級生からいじめにあったりとか教師から体罰を受けていたりしたことが子どもの自死につながっていることがあるといえます。また、子どもが学校でいじめにあっているにもかかわらず、学校がその問題を直視することなく対応に問題があったことから事態の深刻化を招き、結果として自死に至ることもあります。

子どもが学校でいじめにあい、そのことが原因となって自死に至った場合には、加害児童やその親権者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることが可能です。また、それと併せて、公立学校であれば国に、私立学校であれば学校法人に対し国家賠償や、損害賠償請求することも可能です。

損害賠償請求する上で問題となる点は、予見可能性の有無です。一般的には、自死は自死を決断した子ども自身の内心面に由来するものであるので、教師の通常の注意力によっては、子どもの内心を察知して自殺を予見することは困難といえます。そのため、学校の責任を追求した過去の裁判例では、自死の予見が困難であったとして学校の責任を否定する判決もあります。しかし、いじめによる自死が社会問題化している現状においては、学校や教師に今まで以上に高度な注意義務が求められるべきです。いじめに関する報道によって、いたずら、悪ふざけと称して行われている学校内における生徒同士のやりとりを原因として、小さい学生が自死するに至った事件が続発していることが相当程度知られている以上、予見可能性も認められるべきだと考えます。

また、いじめに関して言えば、裁判を行う目的が金銭的な賠償を求めること以外にも目的があります。それは事実の解明を図るという目的です。裁判においては、文書提出命令等の制度を用いて、学校が作成したいじめや体罰に関する調査の資料を提出させたり、証人尋問によって、関係者から事実を聞き出したりすることで、子どもが自死を選択せざるを得なかった事情を明らかにすることに役立つ場合があります。なお、裁判上の和解において、金銭賠償は認められなかったものの、子どもの命日に学校への遺族の立ち入りを認めたり、子どもの名前をつけた文庫の設置、樹木の植樹などを認めた例もあります。

鉄道事故に関する法律問題

朝通勤されている方は遭遇することも多いかと思いますが、人身事故のため電車が遅れるということはかなりの頻度で起こっています。駅員が案内する人身事故というのが、いわゆる自死であることも相当数あります。家族が自死の際に鉄道に飛び込むなどした場合は、鉄道会社から遺族に対して損害賠償が請求されます。この損害賠償額について、よく何億とか一生払えないお金を請求されるというイメージがあるようですが、実際はそうでもありません。そもそも鉄道会社から損害賠償の請求がない場合や、数百万程度の請求がきて最終的には100万前後で和解するケースが多いようです。ただし、自死によって脱線事故に発展したり、乗客が死傷した場合などは多額の損害賠償を請求される可能性もあります。しかし、一般的には数千万円単位の金銭を最終的に支払わなければならないケースは極めて稀です。

次に、鉄道会社からの損害賠償請求がきた場合の対応方法についてです。鉄道会社から損害賠償の請求がきた場合、すぐにはお金を支払わず、必ず請求の内容と根拠資料を書面で提出させる必要があります。鉄道会社が請求してくるであろう損害賠償の中身はつぎのようなものが考えられます。

  • 人件費(復旧のための人件費です。人数や労働時間に問題がないか確認する必要があります)
  • 修理代(列車などが破損した場合の修理代です。本当に破損していたのか、修理のために実際にかかった費用はいくらかなど確認する必要があります)

また、列車の遅れが長時間にわたると、特急料金などの払い戻しが行われる場合があります。実際に払い戻したのかも含めて、払い戻しの人数や金額などを具体的に確認します。

最後に、自死した家族が、うつ病などで責任無料力であった場合について考えます。基本的には遺族が自死した家族が責任無能力であったことを立証できれば、法的責任を負わないと考えられています。ちなみに責任能力とは自己の行為によって発生した結果が違法なものとして法律上非難されるものであることを理解し、認識する精神能力であると解されています。しかし、責任無能力の立証には医師の診断書など、ある程度客観的な証拠が必要となります。また、家族が責任無能力者であった場合でも、例えば、そのことを遺族が認識しつつ、一人で外出させていたような場合は遺族が損害賠償を負うことも考えられます。

 

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