会社を継がせたい~経営者の相続対策と遺言~
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。夏の気候に近づいてきました。正直、事務所はクーラーをつけ始めました。この時期は体調も崩しやすいので注意してくださいね。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、前回に引き続き会社を継がせる、事業承継についてです。今日は、経営者がつくる遺言についてお話しします。
経営者が作成する遺言
前回までは、種類株を活用して承継問題を解決する方法を説明してきました。しかし承継問題を解決する場合、遺言の活用は外せません。言い換えると、経営者が今すぐできることは遺言の作成なのです。最近は相続対策ブームですので、すでに遺言を作成されている経営者も多いでしょう。しかし、その遺言は相続税対策に重点をおいた遺言ではないでしょうか!?税金をいかにして払わないためにつくった遺言も確かに有効ですが、会社、つまり経営を承継するとは税金問題をクリアすればよいというものではありません。それどころか節税はうまくいったが、うまく肝心の事業承継、経営承継できず、事業・経営がストップしてしまうことも多いです。そこで相続税対策でなく相続対策が重要なのです。
遺言を活用した承継対策
相続が発生し、相続人が複数いる場合は、株式は共有されることになります。そして、遺産分割協議により株主として権利行使する者を定めて、その者の氏名を会社に通知することで会社に対して株主としての権利を行使することができることとなります。そのため、遺産分割協議が難航すれば株主としての権利は宙に浮いてしまい、会社経営が行き詰ることになります。後継者に株式をあたえたいなら遺言で株式を相続、または遺贈すべきです。このときに前回、お話しした種類株(議決権制限株式、拒否権付株式)と遺言を組み合わせて承継対策をとることをおすすめします。
経営者と遺言
会社は設立した瞬間に自分だけのものではなくなります。会社の経営者である以上はもし自分が死んだ場合に会社の経営がどうなるかを考えておくことは必要なことです。そこで遺言を作成することが一般の方よりも非常に重要といえます。また、遺言を作成したから大丈夫ということではありません。時間が経つと経営状況や周りの環境が変わるのです。遺言を作成したという経営者の方ももう一度自分の遺言を見直してみてください。
最後に見直すときのポイントです。
- 相続税対策に偏った内容ではありませんか
- 配偶者も遺言を作っていますか
- 相続させようと思っている後継者が経営者本人より先に死んだ場合のことを想定して書いていますか
- 二次相続のことが考えられていますか
- 遺言を作ってから、経営者自身や家族、会社の状況が変わっていませんか
- 遺言の存在を信頼できる人に伝えていますか
- 遺言を執行する遺言執行者を定めていますか
- 経営者の会社に対する思いが伝わるような言葉(付言)が書いてありますか