遺産を世のため人のために役立てる方法とは
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。7月も中旬に入り暑くなってきました。これから2か月ほど暑さに耐えなければなりません。この季節は水分補給をしっかりしないといけません。熱中症に注意しましょうね。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、遺産を世のため、人のために役立てるためにどのような方法があるのかについて書きます。現在の世の中では、一人世帯が増えてきていて誰も相続人がいないという方も増えています。誰も相続人がいない場合は、相続人不存在となり、最終的には国に財産が帰属します。しかし、せっかく築き上げてきた財産を自分が死んだら世のため、人のために使ってほしいという方もいるでしょう。そのときに、どうしたらよいか。一つの方法として、遺言でその財産に法人格をあたえてそれを運用する方法が考えられます。具体的には一般財団法人を設立させて、法人格を与え、その理事、評議員が財産を運用して世のため人のために役立てるということになります。では、具体的に内容をみていきます。
遺言によって一般財団法人を設立する
まず、一般財団法人とは何か!?類似する法人に一般社団法人がありますが、こちらは人の集まりに法人格が付与された団体、一般財団法人は財産に法人格をあたえたものということになります。一般財団法人は、株式会社と異なり営利を目的としません(もちろん財産維持のために収益活動はできます)。一般的には財産を活用してボランティアなどをされる方が多いです。
そして、実際に一般財団法人を設立することになりますが、この財団法人は遺言で設立することができるのです。具体的には遺言に一般財団法人設立のための定款の記載事項を定めておくのです。具体的には次のとおり定款の絶対的記載事項(この記載がないと定款が無効となり、財団法人の設立ができない)内容を定めておきます。
遺言者は、地球環境の維持、保全、確保に寄与するために本遺言をもって一般財団法人設立の意思を表示するとともに、次のとおり定款の内容を定めるものとする。
1.目的 当法人は、地球環境の維持、保存に関する知識の普及を図り、もって豊かな地球環境の確保に寄与することを目的とする。
2.名称 当法人は一般財団法人○○と称する。
3.主たる事務所の所在地 当法人は主たる事務所を横浜市に置く。
4.設立者の氏名、住所 遺言者の住所、氏名
5.設立に際して設立者が拠出する財産及び価額 現金○○円、~の不動産など(遺産を記載する)
6.設立時評議員、設立時理事及び設立時監事の選任に関する事項
7.評議員の選任及び解任の方法
8.公告方法 当法人の公告は、官報に掲載する方法により行う。
9.事業年度 当法人の事業年度は、毎年○月○日から翌年○月○日までの年1期とする。
上記の事項は必ず記載する必要があります。もっとも、一般的には定款を作り、別紙としてつけるという方法が多いです。あと、一般財団法人は必ず評議員3名以上、理事3名以上、監事1名以上、合計7名(各役員は兼ねることができない)がいなければ設立できませんので注意してください。
遺言執行者には司法書士を
上記のとおり、遺言で一般財団法人を設立することはできますが、実際に遺言者が死亡した場合、誰が一般財団法人設立の手続きを行うのか!?それは遺言執行者です。この遺言執行者を遺言で書いておきましょう(遺言で書いていない場合は、家庭裁判所で選任されます)。遺言の内容を手続きする人です。この遺言執行者は基本的に誰でもなれます。友人に任せることでも大丈夫です。しかし、一般財団法人設立のためには法律知識が必要ですので、法律の専門家を選任した方がよいでしょう。そして、法律の専門家といえば司法書士です。一般財団法人設立のためには、必ず登記をすることになります。法人設立登記は司法書士の専門ですので、遺言執行者に選任すれば誰かに登記の依頼をしなくてもそのまま設立手続きすることができます。
今日は、遺言で一般財団法人を設立させる方法を記載しました。ただし、あらかじめ一般財団法人を作っておいて(もちろん財産を拠出します)、遺言信託を設定することでも可能です。
相続人、親族がいないため、世のため、人のために財産を使ってほしいという方はまず当事務所へご相談ください。