初めて相続を経験される方へパート7~遺産相続の最後の手続きは名義変更~
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。5月も終わりますね、本当に月日が経つのが早いと感じます。ここ1~2週間はかなり気温もあがって、お疲れの方も多いかと思いますが、週末にリフレッシュして来月もがんばりましょうね。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、初めて相続を経験される方へシリーズの最終回で、遺産相続の最後の手続である名義変更についてお話しします。このシリーズでは初めて相続を経験される方向けに書いてきましたが、そもそも相続手続きの最終目的は「名義変更」なのです。大事な方が遺してくれた遺産をしっかり相続・承継するためには、最後の名義変更までしっかり行わなければなりません。今日は、この名義変更についてみていきます。
不動産は法務局へ相続登記を申請する
まずは、不動産です。日本では持ち家率が高いですので、ほとんどご自宅を所有しております。そのため、遺産相続がおこると、不動産の名義変更は必須といえます。そもそも、不動産というのは法務局(登記所)というところに、この土地が誰の所有であるか、住宅ローンの担保がついているかどうかなど記録されております。この登記所で登記簿謄本をみて現在の不動産の所有者を確認することができます。
そして、亡くなった時点で亡くなった人名義である場合、その亡くなった人から相続人名義に変更することになります。それを俗に「相続登記」といわれています(実際には「相続を原因とする所有権移転登記」といいます)。この相続登記には、このシリーズでお話ししました戸籍謄本等の書類や遺産分割協議書などが必要になってきます。そして、登記申請書に必要な事項を記入して、登録免許税という登記をするための税金を納めて、法務局へ書類一式提出します。そこで、1~2週間、登記所で審査をして、不備があれば補正、無事審査が通過すれば、登記が完了したということになります。
先ほど、亡くなったときに亡くなった人名義の場合と書きましたが、実際に相続登記手続をしようと思ったら、不動産の名義が先代のままだったということもあります。この場合は、相続手続きが複雑となりますので、やはり1代ずつしっかりと相続登記をしていくことをお薦めします。
預貯金は金融機関へ、株式は証券会社へ
また、預貯金も相続財産となります。判例上は、亡くなった時点で相続人に当然に分割されますので、相続人一人ひとりが金融機関に行って自分の取り分だけ払い戻しができるはずですが、銀行実務では相続人の印鑑も必要になりそのような扱いには応じていませんので注意してください。
金融機関は、亡くなったことを知ると口座を凍結してしまいます。つまり、その口座から引き出すことも口座振替もできなくなります。そのため、凍結される前に預金を引き出す方も結構いらっしゃいます。普通預金しかもっていなければキャッシュカードで引き出すことができますからね。ただ、亡くなった後に引きだすのは相続人の共有の財産から勝手に引き出すことになってしまうのでよくないことということは知っておいてください。
実際の相続手続きとしては、金融機関ごとに相続届と必要書類を提出して預金の名義変更または払い戻しをすることになります。ただ、金融機関ごとで相続届の用紙が異なったり、必要書類の有効期限が違ったりします。そのため、色々な金融機関の預金口座を持っている方が亡くなるとかなり大変な手続きになります。預貯金をどこかに統一しておくということも相続対策と言えますね。
なお、複数の方が預金の払い戻しを受ける場合は、誰か一人相続人代表者を定めて、その方が手続きを行い全額払い戻しを受けてから相続人に分配する方法がとれますので、知っておくと便利です。
株式については証券会社に対して相続手続きすることになります。必要書類等は預貯金とほぼ同じですね。ただ、株式を相続する相続人がその証券会社の口座をもっていない場合、新規開設しなければならないという決まりがある証券会社が多いですのでそのあたり注意してください。
その他の名義変更
その他、車やゴルフ会員権など名義変更しなければならない財産は多いです。相続漏れがないようにしっかり名義変更手続きしましょうね。