相続対策として投資不動産を購入することは家族の幸せにつながるのか!?
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。秋晴れです。気持ちいですよね。そして秋と言えば運動会!今月末は子どもの保育園の運動会があります。はりきっていきたいと思います。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は相続対策としての投資不動産を購入することが本当に有効なのかについて書いていきます。不動産業者が特に進めてきますよね。ワンルームマンションを購入したら相続対策になるなどといった形で営業しています。確かに投資不動産を購入することは相続税の節税になるかもしれません。しかし、単に節税の目的だけで投資用不動産を購入することがよいことなのかどうかじっくり考えていただきたいです。
投資用不動産は一定の節税にはなる
最初に申しあげておきますが、私は相続対策として投資用不動産を購入することがダメだと言っているわけではありません。もちろん節税効果がでてくるかと思います。相続税は、原則として亡くなった時点の資産評価を課税標準額として計算します。そのため、現金をのこしておくと100%その金額に課税されるのに対して、不動産は一般的に購入金額よりも不動産評価の方が低くなります。そのため現金でもっておくよりも不動産を購入したほうが、課税標準額を下げることができ、結果として相続税も低くなるのです。また、投資用不動産の場合は、事業用地ということで土地の評価を下げられる可能性もあります。
つまり、相続対策として投資用不動産を購入することは相続税という面では効果があるかもしれません。
賃貸事業を行うという意識がなければならない
上記のとおり節税効果はあるかもしれません。しかし、投資用不動産ということは本人に賃貸事業を行うという意識がなければなりません。よくサブリースで不動産会社が借主となり家賃保証をするということもありますが、家賃が下がるリスクもありますし、あくまで所有者は本人ですので、その不動産で起きた事件、事故などは所有者の管理責任も問われてしまう可能性もあります。もちろん借主が家賃不払いや退去しないときなどは本人が訴訟などで家賃請求、明け渡しさせなければなりません。投資用不動産を購入すれば管理会社等が全てやってくれるという意識でいると後でそんなはずではなかったということが起こってしまうかもしれません。投資用不動産を購入したならばあくまでオーナーは自分で賃貸事業をするという意識を持つ必要があります。
遺された家族は本当に幸せなのか
そして、根本の問題として、遺された家族が本当に幸せになるのかということです。投資用不動産を購入しようと思った方は、遺された家族が相続税を負担するのは大変だから少しでも負担を減らそうという気持ちから相続対策を行っているのかと思います。しかし、家族は本当にそれを望んでいるのでしょうか。相続税の負担はかかるけど、不動産より現金を遺してくれた方がよいと思うかもしれません。特にご主人が全て家のことなど管理されている家庭では遺された奥様では投資用不動産を相続してもどうしたらよいか分からないかもしれません。遺された奥様は生活の為に投資用不動産ではなく現金がほしいのかもしれません。
もちろん投資用不動産を売却すれば現金化できますが、資産価値が下がって低い金額でしか売却できなかったり、売却行為自体、奥様がよくわかっていなければ相当の負担、心労につながるでしょう。
あくまでも、「節税」という視点でしかみていませんと、本当の目的である「家族の幸せ」をないがしろにしてしまうこともありますので、相続対策を行う場合は大きな視点をもって行っていきましょう。