遺言書には遺言執行者を定めよう
こんにちは。司法書士の加藤隆史です。最近は、空気が乾燥してますので、皆様、風邪にはご注意ください。
コラム「相続・遺言のポイント」3回目では、遺言に遺言執行者を定める重要性についてお知らせします。
遺言に遺言執行者を定めなかったため問題になった事例
次の事例は、遺言書を作ったにも関わらず、遺言執行者を定めなかったために相続がスムーズにいかなかった場合のお話です。
夫Aは、「Aの預金について、妻B5分の2、長女Cが5分の2、長男Dが5分の1の割合で相続させる」という遺言をのこしました。そして、夫Aが亡くなり、妻B、長女C、長男Dが夫の相続財産である預金を遺言書どおりの割合で相続することになりました。しかし、長男Dは自分の相続割合が少ないことに反発しました。とりあえず、妻Bは、遺言書をもって、銀行へAの預貯金を解約に行ったところ、担当者から、「Aさんの預金を解約するには、遺言書のほかに銀行所定の解約書類に、相続する方全員の署名と実印で押印していただく必要があります」と言われました。結局、Dが銀行の解約書類に署名しないため、遺言に基づく割合で解約ができず、あらためて遺産分割協議をして、相続人3名均等に相続することになりました。
実務上、金融機関の預金を解約する場合、遺言書の他に、銀行所定の解約書類に預金を相続する人の署名・押印が必要です。今回の事例では、預金を相続する相続人が3名ですので、3名全員の署名が必要です。そのため、夫Aはせっかく遺言をのこしたにもかかわらず、結局、遺言どおりの預金の分配ができず、自分の思いが実現されなかったことになります。
遺言に遺言執行者を定める重要性
では、上記の事例で、遺言書に遺言執行者を定めておいた場合はどうだったでしょうか。遺言執行者とは、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有しています(民法第1012条1項)。そのため、遺言執行者は、預金の解約を行い、相続人に遺言に定めている相続割合で分配することができます。具体的には、Aの預金を全て解約し、遺言執行者個人の預かり口座に入金します。そして、その遺言執行者自身の口座の中から、相続人B、C、D3名にそれぞれ分配すればよいのです。ここでのポイントは、銀行の解約書類には、遺言執行者の署名・押印のみがあればよく、B、C、D相続人の署名・押印なくても、預金を解約することができます。そして、遺言執行者は、相続財産の管理を行うことができるので、自身の預かり口座に解約金額を入金させることもできます。
以上から、遺言執行者を定めておけば、遺言の内容を実現することができます。また、遺言執行者には、相続人を指定することもできますが、司法書士等の法律専門家に就任してもらうことをお勧めいたします。相続手続きは、法律の専門知識、実務経験が必要ですので、遺言執行手続きに精通した司法書士こそ遺言執行者に適任だからです。
当事務所では、遺言を作成するだけでなく、遺言執行者として、遺言の内容を実現するお手伝いをしています。遺言執行業務を行うからこそ、本当にお客様のご要望に応えることができると考えています。毎月第2、第4土曜日に相続・遺言の無料相談も行っておりますので、遺言作成を考えている方はぜひ、当事務所をご利用ください。