相続税法の改正②
司法書士の加藤隆史です。今年も残りわずかです。年内の内にご相談を解決したいとのご要望の方は、ぜひ当事務所までお問い合わせください。
では、コラム「相続・遺言のポイント」、今回のテーマは前回に引き続き相続税法の改正をとりあげます。前回では、相続税法の改正で、大幅な増税になりうることをいいましたが、今回は、基本となる相続税の計算に説明します。
相続税の計算
相続税の計算は、かなり複雑になっています。まず、被相続人の財産を評価した上で、その財産を各相続人が、法定相続分ごとに取得したと仮定して、各相続人の仮の税額を計算します。そして、算出した各相続人の仮の税額を合計して、その合計額を実際に遺言や遺産分割協議によって各相続人が相続する割合に応じて配分します。
被相続人の財産とは、不動産や預貯金、株式、自動車、ゴルフ会員権も含みます。また、生命保険金(受取人が指定されている)や死亡退職金も本来相続財産にはあたりませんが、相続税の計算においては、相続族財産とみなされて計算されます(みなし相続財産)。そのほか、この相続財産には、被相続人が亡くなる3年前までに受けた贈与も相続税の対象となる財産とみなされます。そして、プラスの財産からマイナスの財産(被相続人の債務)を控除した金額が、「相続税の対象となる相続財産」となります。
相続財産の評価方法
相続財産の評価の方法も複雑です。例えば、土地の宅地については、主に路線価方式で評価します。また、貸家や貸家建付地についても、通常の建物や更地に比べて低く評価されています。そのほか、株式については、上場している会社と上場していない会社の株式では、評価の仕方も異なります。このように、相続財産の評価は、相続税の計算の上で最も重要なことですが、評価の方法が複雑ですので、当事務所にご相談いただけれと思います。
基礎控除の改正
今回の相続税法改正前は、上記の相続税の対象となる相続財産が、基礎控除に満たないケースがほとんどでしたので、相続税を納税する方は、ほとんどいませんでした。改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」という基礎控除額が定められました。つまり、財産の総額が基礎控除額より少なければ税率を適用する金額がありませんので、相続税が発生しなかったのです。
しかし、今回の改正で、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に変更されました。基礎控除額が下がったことにより、改正前であれば相続税の課税対象でなかった方についても、この改正により相続税が課税されるというケースが生じることになります。また、改正前から相続税が課税対象であった方についても、基礎控除額の減少分だけ、課税される財産の額が増加することになります。
この基礎控除の改正が、今回の改正でもっとも大きな変更点であり、この変更により、多くの方にとって増税されることになります。