遺言の作成は、お元気なうちに
こんにちは、司法書士の加藤隆史です。お腹まわりを気にしている今日この頃。最近は外を歩くことが多く、ダイエットにちょうどいいです。しかし、これからどんどん暑くなっていきますので、スーツにネクタイが基本の司法書士は、少しつらい季節がやってきますね。暑さに負けずに司法書士かとう法務事務所は元気に営業してますので、宜しくお願いします。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、遺言はいつつくるべきなのかという点について書いていきます。今はやりの、「じゃあ、いつやるのか・・・今でしょ!」にかけまして、「じゃあ、いつ遺言を作るのか・・・今でしょ!」ということを話していきます。
遺言はいつから作れるのか
法的に有効な遺言は、満15歳以上の方であれば法的に有効な遺言を遺せます。未成年者(現在20歳未満)の場合、原則、親の同意がなければ法律行為をすることができません。例えば、勝手に不動産を購入しようと思って、売買契約をするときには必ず親の同意が必要です(厳密に言えば、親権者が法定代理人として代わりに契約する)。それに比べ、遺言は未成年者でも単独で有効に遺すことができるのです。それは、遺言が本人の最終の意思を確認するものであるから、他の方の同意や代理人というものは出てこないのです。何がいいたいかといいますと、遺言書は作ろうと思えば、いつでも作ることができるということです。
遺言はどんなときに作ることが多いのか
先ほど、遺言はいつでも作ることができるといいましたが、一般的にはいつ遺言を作っているのでしょうか!?大抵、病気になってからとか高齢者になってからという方が多いのではないのでしょうか。人は「自分の死」については目を背けたくなりますから当然と言えば当然なことなのかもしれません。しかし、私は、「遺言の作成は、お元気なうちに」といいたいです。なぜかといいますと、遺言は高齢者でなくても作成しておく必要がある場合が多いのです。遺言者は遺言をするときにおいて、意思能力を有しなければなりませんので、遺言者がいつ、どのような体調のときに遺言を書いたのかということが問題となります。遺言を作成した時に、遺言者が高齢であったり、重病であったりしたことが分かると、公正証書による遺言でも遺言者の意思能力について争いが生じることがあります。公正証書遺言が無効になった判例を紹介します。
公正証書遺言が無効になったケース(東京地裁平成11年9月16日判決)
遺言者に遺言能力はあったが、意識の状態は相当低下していて原案作成に遺言者が直接関与していなかったケース
→「公証人が遺言内容を読み聞かせ、これに対して遺言者は一言も言葉を発することなく、ハーとかハイとか単なる返事の言葉を発したに過ぎず、遺言者の真意の確認方法としては、確実な方法が採られたと評価することができない。この程度の遺言者関与では、遺言の内容の口述がなされたとは評価することができない」として公正証書遺言を無効とした。
このように高齢者が遺言を行う場合、遺言者の意思能力の立証も大切なことになります。その方法としては、本人が別途に自分の意思で書いた自筆の書面を書いておくとか(ただし、自筆証書遺言の要件を満たしていなくてもよい)、医師の診断を受けて精神状況の診断書をとっておくことが望まれます。老人性痴ほう症が疑われる方は、医師による神経心理学的検査を受けることが必要になる場合もあります。
以上のとおり、高齢者になってから遺言を作る場合は、リスクも生じます。そのため、遺言はできるだけ早く、またお元気なうちに作成することをお薦めします。早く遺言を作った後、状況がかわっても、遺言は作り直しができるのでご安心ください。