財産目録を作成しよう~簡単にできる相続対策~
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。秋も深まり肌寒くなってきました。秋がなくすぐに冬がきそうですね。秋といえば食欲の秋、読書の秋などいろいろですが、私は食べることが好きなので食欲の秋になりそうですね。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、遺言まで作りたくないけど相続対策をしておきたいという方にぜひしてほしいこと、「財産目録を作ろう」をテーマにしてお話しします。メディアでも「終活」や「相続対策」など騒がれていて自分も何かしなくてはと思う方も多いと思いますが、いざ、動き始めるとおっくうになってしまうこともありますよね。そこで、簡単にできて最低限してもらいたいこととして「財産目録」を作っていただくことをお薦めします。
財産目録を作成しておくことが相続対策の一歩
「財産目録」とは文字どおり自分の財産をまとめたものです。特に様式などは決まっていませんので、紙とボールペンがあれば足ります。もちろんパソコンで作成しても結構です。
財産目録を作成した方がよい理由は下記のとおりです。
1.自分の財産がどれだけあるか把握できて、これからの人生につきどうやって過ごしていくか見つめなおすこと ができる。
2.遺言を作成するきっかけになりやすい
3.相続人としては、亡くなった後に、どの財産があるか探す手間がかからない
上記のようなメリットがあります。2について言及しておくと、自分の中で財産がどれだけあるか整理され、この財産をあの相続人へ相続させようという気持ちがおき、相続対策の中で一番効果のある「遺言」を作成する気持ちが起きることもあるからです。
特に財産目録を作成した方がよい方とは
それでは、次に、特に財産目録を作成すべき方とは、下記のとおりです。
1.プラス財産の他に借金等の負債がある方
2.独身、パートナーに先立たれた方など一人で生活されている方
3.預貯金の口座や株式、投資信託などの金融資産を預けている金融機関や証券会社を多く持っている方
上記に当てはまる方は、ぜひ財産目録を作っていただけたらと思います。
1については、相続人としては借金が多い場合は、家庭裁判所で相続放棄の申立を行うことも選択できますが、この相続放棄は、被相続人(亡くなった方)が死亡したことを知った日から3か月以内に行わなければなりません。つまり、借金が多いことを知らせておかないと、亡くなった後で相続人が多額の負債を負ってしまうこともあるからです。
2については、一人で生活しているため、亡くなってしまった後、相続人が相続財産を把握するのに時間がかかってしまうからです。特に相続税がかかるようなケースでは、10か月以内に相続税の申告・納税を行わなければなりませんので、初動が遅れると遺産分割協議の時間がとれず、申告に間に合わないということもあります(協議が成立しなくても法定相続分どおりに申告はしなければなりませんが、各減税特例の適用を受けることができなくなってしまいます)。
3については、預金など多くの金融機関に分けている方は、やはり相続人がそれらを把握するのに時間がかかってしまうからです。財産目録がない場合、通常、相続人は自宅の中から通帳を探したり、郵便物などでどの預金があるか把握します。預けている口座が多いとそれだけ相続人の負担が増します。
以上から、遺言まで作りたくないけど家族のために何かしておきたいという方は、今からでも簡単にできる財産目録を作っておきましょう。また、上記で述べましたが、口座の数を集約させたりすることも有効です。ぜひ、遺される大事な家族のために今できる相続対策をしておきましょう。