未成年者が相続人になる場合に注意すべきこと
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。今週、ついにコート着てしまいました。急に寒くなってきて体調を崩された方も多いのではないのでしょうか。実は私もその一人です。体調管理には気を付けて今年あと1か月半がんばりましょう。さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、未成年者が相続する場合の注意点についてお話しします。例えばご主人が若くして亡くなった場合、子である未成年者が相続人となることがあるでしょう。このとき、ご主人の配偶者である奥様も相続人となります。この場合、相続手続きは通常どおりに行うことができるのかという点がポイントです。
未成年者は相続人になる
相続が起きると法定相続人全員が相続権を承継します。この法定相続人には年齢は関係ありませんので、未成年者であっても相続人となります(ちなみに胎児も法律上相続人となります)。相続手続きでは遺言書がない限り、遺産分割協議を行うことが一般的ですので、未成年者もその手続きに参加しなければなりません。しかし、未成年者は単独で法律行為を行うことができず、法律行為を行う場合は親権者の同意が必要です。親権者は通常、両親がなり、片親が亡くなった時はもう一方の親が親権者となります。そして、遺産分割協議という行為は法律行為にあたります。
日常生活に関する法律行為、契約では子の法定代理人となる親権者(親)が子の代わりに契約等を行います。しかし、遺産分割協議では配偶者である奥さんも相続人となり、子も相続人となります。このとき、親権者である奥さんが子を代理して遺産分割協議に参加して、遺産の分配を決めてしまってもよいのかということです。
結論としては、この場合、親権者である親が子を代理して遺産分割協議をすることはできません。つまり親権者と子との間で利益相反してしまうのです。少しわかりにくいので、ある例を挙げます。
ご主人A(38歳)
奥さんB(37歳)
長男C(9歳)
長女D(7歳)
上記の家族の場合で考えるとAが亡くなり、法定相続人は配偶者であるBと子であるC、Dとなります。遺産分割協議には3人で行わなければなりませんが、C、Dが未成年者となります。このとき配偶者であるBと子C、Dとの間には利益相反の関係になります。つまり、BがCとDの法定代理人として一人で遺産分割協議をしてしまうということは、子の不利益にあたるので許されないということです。それでは、どのように相続手続きを行っていくのでしょうか!?
家庭裁判所へ特別代理人の選任
上記の例の場合、子C、Dの法定代理人として親であるBが代理人となることができませんので、家庭裁判所へCとDの特別代理人を選任してもらいます。正確には、被相続人であるAの子C、Dの住所地を管轄する家庭裁判所に特別代理人選任申立を行います。特別代理人の候補者には例えばAまたはBの兄弟、つまりC、Dの叔父さん、叔母さんをたてることが考えられます。ちなみに候補者が誰もいない場合は、裁判所で名簿登載している法律専門家(弁護士・司法書士)が特別代理人に選任されます。
今回のケースではCとDにそれぞれ別の特別代理人を選任します。そして配偶者であるBとCの特別代理人、Dの特別代理人との間で遺産分割協議を行います。
なお、遺産分割協議でもCとDに全く財産がいかないような内容でまとまることは少ないです。なぜなら、特別代理人選任を家庭裁判所へ申立てする際の書類に、遺産分割協議案というものもつけることが多く、子に不利な内容について書いていると家庭裁判所が認めない(申立人がたてた候補者を選任しない)ことがあるからです。
未成年者が相続人になる場合、通常の相続手続きより複雑となりますので、お気軽に当事務所へご相談ください。