長生きのリスクに備える~成年後見編パート2~

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。月末です。みなさま、お仕事などバタバタしておりますでしょうか。私も風邪など引かず元気に働いています。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、前回に引き続き長生きのリスクに備えるということで、任意後見のお話をします。任意後見とは、あらかじめ、自分がもし判断能力が失われたときなどに自分の代わりに法律行為を行ってくれる人(任意後見人)と契約をしておいて、現実に自分が判断能力を失った時に任意後見人が本人の財産を管理するという制度です。法定後見との違いは、法定後見は、本人が判断能力を失った後に申立てを行い成年後見人を選任するのに対し、任意後見は、本人が正常な判断能力があるうちにあらかじめ任意後見人と任意後見契約を締結しておくということです。つまり、自分の将来の財産管理を任せる人を自分で選んでおくことが長生きするための備えとして必要だと思います。

任意後見の利用

今日本は長寿社会です。男性の平均寿命が80歳、女性は90歳の時代です。これは医療が発達したのも要因の一つでしょう。そのため、高齢者でも身体はしっかりしているという方は多いですよね。しかし、年を重ねるということは身体能力も低下していきますが、脳(判断能力)も低下していきます。身体は元気だけど判断能力が低下しているという状態です。代表的なのが認知症ですね。このような方が今後の長寿社会の日本では多くなっていくでしょう。

このような長生きするリスクに備えるものとして任意後見があります。任意後見を利用することで、あらかじめ自分の信頼のある人に判断能力がなくなった後の財産管理をまかせることができます。では、実際にどのような手続きが必要になるのでしょうか。

任意後見は契約で行います。本人と任意後見人となる方との間で行います。契約では、具体的に財産管理の方法や財産の引渡方法、後見人の代理権の範囲、後見人の報酬、契約解除などを合意により決めていきます。契約書は公正証書で作成しなければなりませんので、必ず公証役場で手続きすることになります。そして、任意後見の効力が発生するのは、実際に本人の判断能力が不十分になったときです。契約した任意後見人が家庭裁判所に後見監督人を選任してもらい任意後見人として財産管理を始めていきます。詳しく知りたい方は当事務所までお問い合わせください。

任意後見人の監督

後見人というのは本人の財産を管理することができます。ということは本人の預金などを法律上の権限に基づいて引き出すこともできるのです。よくない例として、本人の財産を使ってしまうという問題も現実におきています。そのため、後見人を監督する人が必要です。法定後見では後見人を家庭裁判所が監督しています。また、家庭裁判所は後見監督人という人を選任して後見監督人が後見人を監督することになります。それに対して、任意後見では、後見人が家庭裁判所に後見監督人の選任の申立を行い、後見監督人が後見人を監督します。

ここで現実に起きている問題として、本人が判断能力が低下しているのに、任意後見人が後見監督人の申立を行わないことです。次回のコラムのテーマとしますが、任意後見契約の前に財産管理契約を結ぶことが多いです。そのため後見監督人を選ばず、ずっと財産管理契約のまま財産管理を続けるという問題が起きています。この問題の詳細については次回説明します。

将来型、即効型、移行型

最後に任意後見には、1将来型と2即効型、3移行型の3つの類型がありますので説明します。それぞれ次のとおりとなります。

  1. 通常の任意後見の契約の形態です。本人が任意後見契約を締結する時点では十分な判断能力をもっていて、本人の判断能力が不十分という状況に至ってはじめて任意後見人による保護を受けるというものです。
  2. 本人の判断能力が少し不十分でも契約を結ぶことができます。この場合に本人の判断能力がすでに不十分な状況にあるため、契約締結後ただちに家庭裁判所に請求して任意後見監督人を選任してもらい任意後見による支援を開始することができます。
  3. 将来自分の判断能力が不十分になった時に備えて、任意後見契約を結ぶと同時に、同じ当事者間で別途、現時点から任意後見契約がスタートするまでの間も財産管理や本人の身上監護に関する民法上の委任契約(財産管理契約)を結ぶことが多くなっています。このような場合、財産管理契約から任意後見契約に移行することになるため移行型といわれています。

次回は、移行型にスポットをあててコラムを書いていきます。

 

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