任意後見制度が広まらない、利用されない理由は!?

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。4月に入りました。桜が咲き、新入生、新社会人も街中でよくみかけます。このような光景をみると、自分の心の中にも新鮮な気持ちが入ってきます。当事務所は変わりませんが、自分自身新たな気持ちをもってお客様に満足いく法的サービスを提供していきたいと思います。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」では、任意後見制度についてお話ししていきます。任意後見制度とはご存じでしょうか。成年後見制度とは少し違います。成年後見制度とは、判断能力が喪失または不十分になった方のために成年後見人等が身上監護を目的とした財産管理を行う制度です。一方、任意後見制度とは、判断能力が喪失、不十分になる前にあらかじめ契約において後見人となる方を選ぶ制度です。大きな違いとしては、任意後見制度は自分で自分の後見人をあらかじめ選べるということです。そのため、一見すごく良い制度のようにみえますが、実は様々な問題もあるのです。

任意後見制度が広まらない理由

実は任意後見制度は成年後見制度と同時期に平成12年から利用できるようになりました。しかし、成年後見制度と比べますと任意後見制度を利用している方は統計的に少ないようです。なぜでしょうか!?

まずは、制度自体が認知されていないことがあげられます。それは成年後見制度もあてはまりますが、ただ、私的に最近は世間にも知られてきている印象を受けます。

あとは、手続きが非常に煩雑ということもあげられます。というのもまずは契約段階で必ず公証役場で任意後見契約書を公正証書で作成しなければならないからです。慣れていない人からみるとかなり面倒です。そして、実際に任意後見人として後見にうつるときも家庭裁判所に、後見監督人の申立を行わなければならない等これまた、慣れていない人からみたら大変な手続きです。

さらに、任意後見受任者の適任者が少ないということもあげられると思います。つまり、任意後見人と事前に契約をするわけで、相当な信頼のおける方を選ぶことになるため、その適任者がなかなかみつからないということもあります。

このようなことから、なかなか利用者が増えない、制度が広まらないということがおこっています。

任意後見制度の問題

タイトルのとおり、任意後見制度には問題もあります。まずは、なかなか任意後見に移行されないという点です。どういうことかといいますと、任意後見契約はそれだけ単独で契約するのではなくて、その前提として財産管理契約見守り契約というのもセットで結ぶことが多いです。任意後見は本人の判断能力が不十分になってから任意後見受任者が家庭裁判所に後見監督人選任の申立を行うことで発動されます。そうすると本人の判断能力が不十分になっているか任意後見受任者は日頃から接していなければなりませんので、事前に見守り契約を結ぶということです。また、急に判断能力が衰えるということはありませんので、判断能力は衰えていないけど任意で財産管理を行う任意財産管理契約を結ぶことがほとんどです。そして、これらの契約を結んでいると、判断能力が衰えてきても任意後見に移行しないでそのまま財産管理契約に基づき財産管理を行うということがでてきます。問題点としては、任意の財産管理期間中では、本人が財産管理を適切に行っているかチェックすればよいですが、本人の判断能力が衰えてからでは財産管理をチェックすることが難しくなってきます。任意後見に移行すれば本人の代わりに後見監督人が後見人をチェックするのですが、それを嫌がって本人の判断能力がおとろえてもそのまま任意財産管理を継続するという輩が出てくるのです。

さらに、後見人報酬の二重払いという問題もあります。成年後見では、後見監督人は必ずしもつくということはないので後見人のみに報酬を払えばよいことになり、後見人の報酬は家庭裁判所が本人の財産、後見業務などを勘案して決定しますので、比較的安心できます。しかし、任意後見契約は後見人の報酬が高額に設定されるケースもありますし、後見監督人が必ずつきますので、後見監督人の報酬もふたんしなければなりません。このように任意後見制度はある程度お金がないとなりたたなくなる制度なのです。

本日は、任意後見制度のよくないところをみてきましたが、これから様々な問題をクリアできるような法制度になることを望みます。

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