初めて相続を経験される方へパート5~遺産分割協議は進め方、分け方~
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。せっかくの週末あいにくの雨ですね。これからやむようですが。私の本日の予定は、研修とご相談のご予約をいただいておりますので、バリバリやっていきます。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、シリーズもの、初めて相続を経験される方向けのパート6です。本日は遺産分割協議はどうやって進めるの、分け方について私の考えなども含めてお伝えいたします。一生に何度も相続を経験されるわけではなりませんので、基礎的なところからお話しいたします。
遺産分割協議はみんな集まるの!?
ところで、遺産分割の「協議」ということだから相続人みんな一同集まらなければならないと思っている方もいらっしゃるでしょう。確かに相続人全員が集まれればいっきに話が進むでしょう。しかし、相続人がみんな近くに住んでいるわけでもないでしょう。
実は、法律上、遺産分割協議の進め方、方法などは決まっておりません。つまり、相続人全員が一同に集まらなくてもよいのです。例えば、電話でのやりとり、手紙等でも可能です。大事なのは「相続人全員の合意」です。相続人全員が納得すれば遺産分割協議が成立するのです。また、協議だからといって、議長などを置く必要はありませんが、協議の進行役・中心となる方がいると進みやすいでしょう。
ちなみに、相続人全員で集まらない方が遺産分割協議が進むこともあります。例えば、兄弟の一部同士の仲が悪い場合です。この場合、仲の良い兄弟がお互いの意見を電話や会ってききとり、意見をまとめるということができます。会うと喧嘩になるという兄弟も多いでしょうから、全員一同に集まらずに進めることにもメリットがあるのです。
遺産分割、どのように分けるか決まりはあるの!?
では、実際に遺産分割の中身に入ります。遺産をどのように分けるのか!?決まりはあるのでしょうか!?
実は法律に遺産分割の基準について一定の指針が定められています。民法第906条に定められています。
(遺産の分割の基準)
第906条 遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。
どうでしょうか。遺産といっても不動産、預金、株式、自動車など種類があります。人それぞれ所有していた資産は違います。例えば、自宅の不動産とわずかな預金、または預金のみということもあるでしょう。さらに相続人の相続時の年齢や職業、生活状況など人それぞれです。その家族に沿った形で一番良い方法で決めなさいよということなのです。法定相続分がこうなっているからこのように分けなければならないといったように一律に決まりはないので、ある程度様々な事情を考慮して自由に決めてくださいということです。例えば、3歳の子どもが相続人になる場合に不動産を相続させても管理が大変でしょう。ただ、子ども名義の口座を作ることができるので現金を相続させることはできるでしょう。色々な考え方がありますので、それぞれの考えにあった形で分割するのです。
不動産は共有にしないが鉄則
そうはいっても、私の実務経験上、このように分けた方が良い、このような家庭はこのように分割するとまとまりやすいということはある程度分かります。その中で不動産は共有にしないということは大事です。例えば、兄弟が3人ずつだから法定相続分どおり平等に3分の1ずつ分けよう、不動産も3分の1ずつ共有にしよう~といったことは避けるべきです。なぜなら、共有にした後、だれかが亡くなってその相続人がでてきたら色々と文句を言われて管理がうまくいかなくなった、売却ができなくなったということが起こる可能性があります。共有というと一人で自由に管理・処分をすることができません。原則として全員の意思統一が必要なのです。今は仲のよい兄弟でも何がきっかけで関係が悪化するか分かりません。関係が悪化することで確実に不動産の管理がうまくいかなくなります(固定資産税の負担割合なども含めて)。
ただ、不動産を相続した後にすぐに売却するときなどは例外的に共有にしてもよいかと思いますので、分け方など専門家のアドバイスを利用するのもよいかもしれません。
遺産分割協議をするうえで、大事なことは「将来のことを予測して分ける」ということです。その視点をもって遺産の分け方を考えてみましょう。