相続がおきると預貯金はすぐに凍結されてしまうのか!?
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。寒くなりましたね、私はそろそろコートを出そうかなと思っています。年末が近づいてきてプライベート、仕事忙しくなっていきますがみなさまがんばりましょうね。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、本人が亡くなった後にその人の銀行口座はすぐに凍結されてしまうのかについて書いていきます。普段ご相談を受けるときにも感じますが、預貯金がすぐに凍結されてしまうと思われている方は結構いらっしゃいます。確かに亡くなった時には金融機関はその人の預貯金を凍結、つまり、入出金できない、引き落としができない状態にしてしまいます。では、なぜ金融機関は預貯金を凍結するのでしょうか!?本日はこのような視点からも解説していきたいと思います。
預貯金の凍結
まずは、タイトルにある「相続がおきると預貯金はすぐに凍結されてしまうのか?」ですが、結論から申し上げますと、答えは「凍結されない」です。なぜなら亡くなったことを金融機関は知りえないからです。当然と言えば当然でしょう。今やほとんどの方が銀行口座を複数もっている時代です。金融機関も自分の銀行の口座をもっているお客様が亡くなった情報をすぐにつきとめるということはできません。よく、亡くなってしまったから預貯金が凍結されて動かせないのでは、というご相談も受けますが、金融機関に亡くなったことを伝えていないのであればそのまま預貯金を引き出すことは可能でしょう。ただし、銀行の窓口では預貯金を引き出すことはできません。銀行の窓口では本人確認を必ずして、口座名義の本人しか預貯金を下すことが出来ないからです。当然口座名義の本人は亡くなっているため、いくら家族・相続人の方が窓口に行っても預金は下せません。しかも、窓口にいくことで名義人が亡くなったことを銀行が知ります。そうしますと銀行はその名義人の口座を凍結してしまうでしょう。ここで、預貯金を引き出すことが可能というのは、あくまでATMでの話です。その家族・相続人が本人のキャッシュカードの暗証番号が知っていれば預貯金を引き出すこともできますし、引き落としも継続されます。そのため、定期預金などは窓口でなければ解約できませんので、必ず相続手続きを経なければ預金を引き出すことはできません。
なぜ預貯金を凍結するのか
それではなぜ金融機関は口座名義人が死亡した場合に預貯金を凍結してしまうのでしょうか!?憲法にも財産権が認められていますが、金融機関が勝手に凍結してしまうというのも疑問があるでしょう。しかし、金融機関が口座を凍結するのには理由があります。それは、相続争いに巻き込まれないためです。相続財産は亡くなった瞬間に相続人のものになります。相続人が一人であれば問題ありませんが、相続人が複数いた場合は遺産分割協議によって、相続財産の取り分を決めることになります。つまり、亡くなったことを知ったときに口座を凍結しないと相続人の一人が勝手に預貯金を下して費消してしまうかもしれません。そうすると他の相続人から金融機関あてに、「なぜ勝手に引き出しさせた。あれは相続人全員のものなんだ」と文句がでることでしょう。この場合は損害賠償問題に発展する可能性もあるのです。そのため金融機関は自分の責任を問われないように、預貯金の引き出しができないように口座を凍結して、正式に相続手続きを経なければ預貯金を下させないということになります。
亡くなったことを偶然知った場合も預貯金が凍結される
少し余談ですが、金融機関が口座名義人が亡くなったことを知ったときに預貯金が凍結されますが、それは偶然知った場合でも凍結されます。例えば、銀行の営業マンが定期的にお客様の自宅に訪問するときに口座名義人が亡くなっていたことを知った場合も凍結されてしまいます。また、地方では著名な方であれば新聞に載ることもありますし、葬儀が近所で行われて偶然通りかかるということもあるでしょう。その場合も預貯金は凍結されてしまうのです。よって、亡くなった本人の家族側から金融機関に伝えなくても勝手に口座が凍結されてしまうというケースもあるのです。
どのように預貯金の凍結を解除するのか
最後に、預貯金の凍結を解除する方法ですが、これは相続手続きを行うことになります。具体的には、相続人を確定するために戸籍謄本等を収集し、相続人全員で預貯金の分配を決めてから金融機関で預貯金の解約手続きを行うことになります。そのため、口座名義人の預貯金で生活していた家族は、すぐに預貯金の解約手続きをしなければ生活に支障がでてしまいます。相続には慣れていない方がほとんどですので、このようなときは専門家に頼ることも検討してみてください。当事務所も相続による預貯金の解約手続きをお手伝いさせていただいておりますのでお気軽にお問い合わせください。