相続放棄と空き家問題
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。寒かったり暑かったりどうなんでしょ!?インフルエンザも流行っているようです。みなさま体調にはくれぐれもお気を付け下さい。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、相続放棄と空き家問題をテーマにします。両親が住んでいた家があるけど、売れにくいし経費の方がかかりそうだから相続放棄したいという相談もたまにいらっしゃいます。このような相談を受ける場合、私はそのまま相続放棄をしますといって依頼を受託することはありません。ご相談者様に相続放棄をすることでどのようなことになるのかしっかり説明してからあらためて相続放棄されるのか否か確認します。
空き家問題
統計的に相続放棄は右肩上がりで増えているようです。その理由の一つに空き家の問題もあるでしょう。つまり、売れない、危ない不動産は財産ではなくリスクと考えて面倒な処理をするくらいなら相続放棄をしてしまおうというものです。相続放棄をすればその人が空き家に関するリスクを避けることができます。
ここで空き家のリスクについて説明します。空き家になるとまず火災の危険性があります。普段管理していないため放火などリスクが高まるのです。また、浮浪者が住みついてしまうというということもあります。さらには犯罪に利用される可能性もあるのです。空き家の管理を怠っていて建物が崩れ誰かが怪我をしたりしてしまうと空き家の所有者が責任を負うことになります(所有者責任)。つまり相続人の責任になってしまうのです。このように空き家を所有するくらいなら相続放棄をしてしまおうという方がいるのです。
相続放棄をすることで
そこで相続放棄を検討するのです。実際にそのような相談を受けることもあります。しかし、私が実際に相続放棄をお手伝いすることは少ないです。なぜでしょうか!?それは相続放棄をすることでどうなるのか説明しご相談者様が相続放棄を選択しないという判断をされるからです。では、相続放棄をするとどうなるのでしょうか。
まず、相続放棄をすることで他の相続財産を相続できなくなります。つまり、空き家になる不動産は相続しないけど預金は相続したいということはできないからです。他にどうしても相続しなければならない財産がある場合は空き家となりうる不動産があったとしても相続放棄することはできないでしょう。
また、相続放棄をすることで次の順位の相続人に相続権が移ることが知られていないということもあります。例えば親が亡くなり子どもが相続放棄をした場合、その子どもからみるとおじさん、おばさんに相続権がうつってしまいます。おじさん、おばさんとは良い付き合いがあり、迷惑はかけられないと思い、相続放棄を踏みとどまることが多いのです。自分が相続放棄をしたら次の順位にその相続権がうつることも知っておいたほうがよいです。
相続放棄の期間について
上記のとおり相続放棄を踏みとどまるということも多いのですが、そもそも相続放棄ができる期間が経過しているということもよくあります。相続放棄は亡くなったのを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申立しなければなりません。空き家をどうこうすると考えている間に相続放棄の期間を経過してしまうこともあるのです。3ヶ月は意外にあっという間に過ぎますので注意が必要です。この場合は3か月以内に相続放棄の期間伸長の申立てを家庭裁判所にすることをおすすめいたします。
このように専門家に相談される場合は、専門家が相続放棄について説明しますので、相続放棄を踏みとどまる方が多いかと思いますが、専門家に相談せず相続放棄を家庭裁判所に申立される方も結構いらっしゃいます。そのため統計的にも相続放棄が増えているのでしょう。ただ、その結果、空き家が生じてその危険性から行政が動かざるおえないということが社会問題になっているということも認識する必要があるでしょう。