相続対策としての死因贈与と遺言の違いとは!?
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。本日は清々しい朝ですね。暑すぎず寒すぎずちょうどよい気候です。6月に入りもうすぐ梅雨にはいりますが、良いお天気のうちに息子と自転車の特訓をしたいと思う今日この頃です。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は相続対策として遺言を作成することと死因贈与契約をすることがありますが、どのような違いがあるのかをテーマにします。遺言に比べると死因贈与契約という用語は知らない方が多いかと思います。死因贈与とは亡くなったら贈与しますという契約のことです。遺言も亡くなった相続させます、遺贈しますというものなので似ている制度といえます。ではどのあたりが異なるのでしょうか。
死因贈与は遺贈に関する規定が準用される
遺言で相続人以外の第三者に遺産をのこす、あげることを遺贈といいます。亡くなったら無償であげるという意味では死因贈与とほとんど同じです。そのため民法の定めで死因贈与は遺贈の規定を準用すると定めています。
民法544条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する
上記のとおり法律の同じ条文が使われることが原則ですので、死因贈与と遺贈は同じといえます。同じである点は次のとおりです。
- 無償であげること
- 遺言、死因贈与契約を行う執行者を定めることができること、家庭裁判所での選任申立も可能
- 税金は相続税扱い
- 遺留分減殺請求の対象になる
ではどこが異なるのか。下記のとおりあげてみます。
- 遺言による遺贈は15歳以上であれば未成年でも単独でできるが、死因贈与契約は未成年者の場合に親権者の同意が必要である
- 遺言では受ける側は受けることを拒否(放棄)することができるが、死因贈与契約は放棄することはできない
- 遺言は必ず書面で作成しなければならないが、死因贈与契約は口頭でも成立する(ただし書面でのこさないといつでも撤回できる)
- 遺言では生前に不動産の仮登記ができないが、死因贈与契約では仮登記ができる。
上記のとおり結構違いはあります。基本的には死因贈与契約を行うメリットとしては生前にあらかじめ渡しておきたい人の意思を確認でき必ず渡したい人に自分が亡くなったら渡せるという点です。遺言の場合は受け取る方が拒否(包括遺贈の場合は相続開始を知ったときから3か月以内)できます。実務ではほとんど遺言が利用されていますが、上記のような事情がある場合は死因贈与契約も検討されることをおすすめします。ただし、死因贈与契約をする場合には必ず公正証書にすること、死因贈与執行者を定めることが重要です。特に執行者を定めないと亡くなった方の相続人の協力を仰がなければ手続きができないため注意すべきでしょう(なお、執行者を定めていない場合は家庭裁判所に死因贈与執行者選任申立ができます。死因贈与執行者は判例上、遺言執行者の規定が類推適用されます)