休眠担保権の抹消にはどのような方法があるか!?

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。梅雨の時期に入り雨の日が続きます。水不足も心配ですが、九州の方では大雨による災害も続いています。自然のことは人間の力ではどうしようもありませんがそれでもよい方向にいってほしいと願わずにはいられません。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は前回のコラムをうけ、休眠担保権の抹消手続きについてです。前回のコラムでは、長く放置された抵当権等の登記を抹消しなければならない理由や相続が原因で抹消手続きが大変難しくなるというお話をいたしました。本日は、実際にどのように休眠担保権を抹消するのかみていきます。

休眠担保権の抹消も共同で抹消するのが原則

まず基本的なところからで抵当権抹消登記は、現在の不動産の所有者と抵当権者が共同で抹消手続きを行います。休眠担保権は、抵当権が古いため抵当権者が行方不明、居場所が分からないというところに問題がありますが、まずは登記簿等から抵当権者の所在場所などを確認します。亡くなっている場合は相続人の居場所も確認します。そこで相続人全員が判明すれば、相続人全員に協力してもらい抵当権抹消登記をすることになります。ただ、相続人全員が判明しても抵当権抹消登記手続に協力してくれない場合もあります。この場合には、その相続人を相手取り抵当権抹消登記請求訴訟を行い、勝訴判決を得て、不動産の所有者が単独で抵当権の抹消登記を行うことになります。しかし、古い抵当権の抹消であることから登記簿上の記載だけで相続人を追跡するのが難しいことが非常に多いです。この場合はどうしたらよいでしょうか。

休眠担保権の抹消手続きの特例

休眠担保権者が所在不明、行方不明の場合には、不動産登記法で特例が定められています。不動産登記法第70条です。特例として以下の3つが定められています。

  1. 休眠担保権者等が行方不明の場合、裁判所に公示催告の申立てをして除権決定を得れば、不動産の所有者が単独で抹消手続きができます。
  2. 休眠担保権者が行方不明の場合、弁済証書など完全に弁済があったことを証する書類があればそれをもって、不動産の所有者が単独で抹消手続きができます。
  3. 休眠担保権者が行方不明であり、担保権の弁済期から20年以上が経過している場合で、債権額・利息・遅延損害金の合計額につき供託した場合に、不動産の所有者が単独で抹消手続きができます。

以上の3つの方法があります。1の抹消手続きは抵当権等の担保権に限らず、地上権や買戻権なども可能です。しかし、1は公示催告を申し立てるために権利が消滅していることを証明する必要があることからそれらの書類はのこっていないことがほとんどで実務上利用は少ないです(消滅時効を援用する場合もいったん訴訟を行わなければならず公示催告の申立のなかで援用することはできません)。また、2も弁済証書など残っていることがほとんどありませんので実際に利用することが難しいです。一番多く利用されているのが3の方法です。明治や大正時代の債権額は当時の価格を基準にしますので遅延損害金を合わせても供託する金額も少額ですみます。ただ、昭和以降に設定された抵当権の場合は債権額が高額な場合もあり、この場合は多額の供託金がかかりますので利用が難しいこともあります。また、相続人がいることが分かるのに1~3の方法をとることは許されません。万が一、簡易な方法で抹消登記をした後に相続人から損害賠償を請求されてしまうという可能性もあるからです。そのために、相続人調査はしっかり行った上で、それでも判明しない場合に上記特例の手続きで抹消登記手続をしなければなりません。

このような休眠担保権は意外に多く残っております。この休眠担保権が残っていることで、不動産の円滑な取引などを阻害する要因となっております。当事務所は司法書士として、依頼者のために休眠担保権を抹消するというだけでなく社会的にも抹消しなければならないという使命をもってこの問題に取り組んでいきたいと思います。

 

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