新築建物の増加が空き家問題に拍車をかける!?
こんにちは、司法書士の加藤隆史です。9月に入りましたが残暑まだまだ厳しいですね。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、深刻な空き家問題をテーマにします。平成27年5月に空き家対策の推進に関する特別措置法が完全施行されましたが、まだまだ課題は山積みです。少し前のデータですが日本では820戸、およそ7~8戸に1戸は空き家になっているようです。これが2035年には3戸に1戸が空き家という時代が訪れるようです。おそらく空き家発生率は急激に上昇していますので、このデータよりも早く進むのではないかと思います。空き家対策を考える前にまずは空き家問題を知ること、そして、空き家が生じる原因をおさえなければなりません。そこで本日は空き家の原因に焦点をあててみます。
空き家問題とは
そもそも空き家問題とはどのような問題なのでしょう。空き家とは、一定期間、使用されていない建物、工作物、敷地のことですが、そのような状況になりますと、まず、防災面に問題が生じます。人が使用していない建物は傷みやすく、自然災害により屋根の瓦が飛んで人にぶつかって怪我をさせてしまうこともあります。この場合は建物の所有者が責任を負うことになります。つまり、怪我をされた方に損害賠償しなければなりません。また、放火や犯罪に利用される可能性も高いです。そして、衛生面からも問題が生じます。管理されていない建物、その敷地には草、木の枝が伸び放題、害虫の住処になったりします。そうすると近隣の住民の方に多大な迷惑をかけます。害虫の死骸などによる異臭も問題です。さらには、景観にも問題が生じます。空き家が多い町はやはり不気味です。放置された建物が周辺にあるだけで町の印象はとても悪くなります。最終的には不動産の時価評価が下がってしまうということも考えれれ、周りの資産価値の問題にまで発展してしまいます。
相続から空き家問題が生じる
以上のような空き家問題がなぜ生じるのか。まずは、相続問題があげられます。現在の法律では、亡くなった方に遺言がのこされていない限り、相続人全員で協議をして不動産を取得する方を決めなければなりません。そのため、相続人一人が反対したり(つまり争族)、行方不明だったりすると解決に時間がかかり、その間、空き家には手をつけられません。また、売却し換価できないような地域にある不動産の場合は、相続人全員が相続放棄をしてしまうということもあります。その場合は、行政が手をつけるまで空き家が放置されてしまいます。さらには、その空き家が何代も前の方の名義のままのこっているということもあります。いわゆる相続登記がされていないということです。この場合は、相続関係者が多くなり、協議をまとめることが非常にむずかしくなります。相続から空き家問題が生じるといっても過言ではありません。
日本人の新築志向が原因!?
空き家が生じるのは根本的には、未婚率が上昇し人口が減少しているのに、新築物件が増えているということに尽きるでしょう。住む人が減って、建物が新しく増えて行けば、当然空き家は増えていきます。しかし、建物はどんどん建築されています。それはなぜか!?まずは日本人に新築志向があることがあげられます。新しいもの好きということです。そこで、新築はよい、中古は悪いという価値判断になってしまっているのかと思います。仕方がないといえばそうでしょうが、はたして新築好きは単に日本人の気質だけの問題でしょうか。
中古は新築より税金上優遇されていない
新築が増える最大の原因は、税制度です。新築には様々な税の優遇措置があります。給付金の支給なども新築物件を条件としているものが多いです。一方、中古不動産の購入には新築ほど税が優遇されていません。古い不動産であれば全く税金の優遇がない可能性もあります。このように、日本の税制度から新築を購入するように流れができてしまっているのです。政治問題もあり深くは言及しませんが、中古不動産も新築並みに税制度を変更しなければ中古の購入者は増えていきません。
空き家問題は考えれば考えるほど深刻です。マンションにいたっては戸建よりさらに状況は悪いです。空き家問題について真剣に考え対応策を早急に講じなければなりません。年金と同じく先送りにしてよい問題ではありません。