相続放棄の注意点
みなさん、こんにちは。司法書士の加藤隆史です。もうすっかり冬で、家でも事務所でもガンガンに暖房をつけてます。私のように寒さが苦手な方にとっては、冬は電気代が高くなり困りますよね。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」のテーマは、相続放棄です。相続放棄は、一般の方が思っている相続放棄と民法で定められている相続放棄とは異なってきますので、今回のコラムを参考にしていただければ幸いです。
相続放棄とは
相続放棄とは、相続人が、相続の効果を拒絶し、初めから相続人でなかった効果を生じさせるものです。相続放棄をしようとする方は、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、相続放棄をする旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。よく、「相続放棄をします」と他の相続人に知らせれば自分が、法的にも相続放棄をしたことになると思ってらっしゃる方が多いと思いますが、きちんと家庭裁判所に対して申立てをする必要があります。
そもそも相続放棄を行う場合とは、被相続人の遺産の内、財産より負債が多い場合に相続放棄を行うことが多いです。そのため、相続が開始して自分が相続人であることを知ってから3か月以内(通常、被相続人の遺族であれば死亡日から3か月以内)に家庭裁判所に相続放棄を申立てを行わなければ、被相続人の負債を負うことになってしまいます。そのため、まず、相続放棄をするには家庭裁判所に申立てを行うことを知っておいてください。
相続放棄の手順
では、実際に相続放棄の手続きの手順ですが、まずは、申立書に、①申述者の氏名・住所、②被相続人の氏名・最後の住所、③被相続人との続柄、④相続の開始があったことを知った年月日、⑤相続放棄をする旨などを記載し、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。申立書は、実際に裁判所に持参することはもちろん、郵送で送るも可能です。次に、家庭裁判所の担当官が、申述書や添付書類をチェックし、特に不足書類がなければ、申述者に対して、相続放棄の申立がされましたという照会を出します。その通知を受け取った申述者は、相続放棄をしたことに間違いない旨を裁判所に対し伝えます。その後、相続放棄の受理がされ、受理通知書を申述者に送付します。受理通知書自体は、証明書ではないので、被相続人の債権者に対しては、相続放棄申述受理証明書といった相続放棄をしたことの証明書を提出します(債権者によっては、コピーや相続放棄した旨を口頭で伝えることをもって処理してくれることもあります)。相続放棄を申立てから受理されるまで一般的には約1か月くらいです。また、相続放棄は、相続人全員で行う必要はなく、1人でも申立てが可能です。
なお、相続放棄の必要書類は、下記のとおりです。
- 被相続人の死亡したことが分かる除籍謄本
- 申述者が被相続人の相続人であることが分かる戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
- 収入印紙800円と予納切手
※ 相続財産に不動産がある場合は、登記事項証明書(登記簿謄本)などを提出することがあります。
※ 債権者(サービサー等)からの支払催告通知書などがあれば提出することがあります。
※ 相続を知ってから3か月を経過した場合で、相続開始を知ることができなかったなどの特段の事情がある場合は、家庭裁判所に対する上申書と申述者の印鑑証明書を提出することがあります。
相続放棄をした後は
相続放棄した後は、必ず次の相続人になる方に、相続放棄をしたことを知らせましょう。例えば夫が死亡して妻、子が全員相続放棄をした場合は、その被相続人の親が相続人となります。負債が多い場合などは、後々のトラブルにもなりますので、次の相続順位の方のために相続放棄を知らせることが重要です。