家督相続
家督相続とは、戸主の死亡又は戸主権の喪失に基づく、戸主の法律上の地位の承継のことで、家督相続人は、その地位の承継の結果として、前戸主が有していた財産上の権利義務を承継します。なお、戸主とは、家族の統率のために権利義務を有している者であり、家の氏を称する権利、居所指定権・離籍権、家族の入籍又は去家に対する同意権、家族の婚姻又は養子縁組に対する同意権・離籍権・復籍拒絶権、家族の婚姻又は養子縁組を取り消す権利、家族たる養子が養親の死亡後離縁する場合の同意権、扶養の義務などがあります。
この家督相続は、旧民法上の制度であり、昭和22年5月2日までに開始した相続について行われます。家督相続の開始原因として、戸主の死亡や戸主の隠居などがあります。隠居とは、戸主がその家督相続人に戸主の地位を承継させるために自らの戸主権を放棄することです。つまり、旧民法の適用される相続においては、死亡以外にも権利義務の承継が行われる場合があるということです。
不動産登記において、家督相続人は、登記原因を「家督相続」として、単独で所有権移転の登記を申請することができます。登記原因証明情報としては、家督相続人からの家督相続届に基づき同人の戸籍に家督相続の旨が記載された戸籍謄本のみを提出すれば足ります。つまり、誰から誰に家督相続したということを証明すればよいのです。
なお、旧民法の相続において、家督相続以外にも相続が発生するものとして、遺産相続があります。遺産相続とは、現在の民法の「相続」と似ていますが、戸主の地位のない者が死亡したことにより、その者に属した財産上の権利義務の承継のことをいいます。遺産相続の場合、家督相続のような戸籍上の届出は必要ありません。また、遺産相続の場合の不動産登記の原因は「遺産相続」となり、それ以外の添付書類などは、現行の相続登記と異なるところはありません。