遺産分割協議後に相続放棄できるのか!?
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。8月後半ですが、まだまだ暑い日が続きますね。体調管理が重要ですね。さて、本日のコラム「相続・遺言のポイントでは、最近の相続放棄につき、遺産分割協議後の相続放棄ができるのかという論点にぶつかりましたので、こちらを考ご紹介し、考えてみます。
遺産分割協議後でも相続放棄できる場合がある!
原則、相続放棄をする前に、民法で定めている事項に該当すると相続放棄ができなくなります。例えば、相続財産の承継や処分をしてしまった場合などです。しかし、遺産分割協議により財産を承継しなかった相続人が、後に多額の相続債務が発見された場合、この場合でも相続放棄ができないのか!?ということです。
この場合、多額の債務があることを知っていたならば、遺産分割協議をせずに相続放棄をしていたと考えられ、亡くなった被相続人との生活状況や他の相続人との協議内容を考慮し、遺産分割協議が要素の錯誤により無効となり、法定単純承認にあたらないと解釈する考え方もあるようです。必ず、相続放棄できるということではありませんが、相続放棄できる可能性があるというわけです。
この場合はもちろん、当該遺産分割時点で債務が知りえなかった理由などを記載した上申書を相続放棄の申立する際に提出することが必要でしょう。
なお、熟慮期間についても、大阪高等裁判所平成10年2月9日の判例で、「民法915条1項所定の熟慮期間については、相続人が相続の開始の原因たる事実及びこれにより自己が法律上の相続人となった事実を知った場合であっても、3ヶ月以内に相続放棄をしなかったことが、相続人において、相続債務が存在しないか、あるいは相続放棄の手続きを取る必要をみない程度の少額にすぎないものと誤信した為であり、かつそのように信じるにつき相当な理由があるときは、相続債務のほぼ全容を認識したとき、または通常これを認識しうべきときから起算すべきものと解するのが相当である」という判例があります。
つまり、多額の相続債務があったことを知ったときから3か月以内に相続放棄の申立を行えば、相続放棄が受理される可能性があるということです。
上記の論点は反対の解釈をとる判例もありますので、一概に相続放棄できるというわけではありません。
しかし、お客様にとっては、多額の相続債務を承継してしまうかどうかという重大な事態ですので、相続放棄が受理されるよう、当事務所でもしっかり手続きを行ってまいりますので、このような問題を抱えている方も是非、当事務所へご相談ください。