信託を活用した具体的な相続スキーム

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。4月に入ってから少し落ち着いている感じはしますが、その分、内容の濃い相談に集中して対応しております。4月後半に入ると言えば、もうすぐゴールデンウィークですね。消費税増税後の最初のゴールデンウィークはみなさんがどのように過ごされますでしょうか!?4月はやはり消費が落ち込みましたので、ご自宅で過ごされる方も多いかもしれませんね。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」では、前回からの話の続きで信託を利用した相続スキームについて具体例をみてみたいと思います。信託は、事業承継やまちづくりなどに活用できるものですが、相続や後見の分野でも活用できます。今日は相続分野に絞って具体例をみていきたいと思います。

子どものいない夫婦の場合の信託による相続スキーム

夫Xは、妻Yと仲良く暮らしておりますが、子どもはいません。また、夫Xには弟のZがいます。Xは、地主として先祖代々引き継いできた土地とその敷地内のアパート、マンションを所有していて、その地代や賃料などの収入を得て生活をしていました。夫Xは自分が死んだときに妻Yに不自由な生活をさせたくないので、Xの所有している不動産や預金などすべての財産を譲りたいが、もし次に妻Yが死亡した場合はその財産は全てYの兄弟へ流れていってしまいます。妻Yが財産を承継した後に遺言を書いて夫Xの弟のZに遺贈するという遺言を書いてくれればよいとおもっておりますが、Yがそのとおり遺言を書いてくれるかわかりません。そのため、夫Xとしては、先祖代々守り抜いてきた不動産が妻Yの兄弟へ渡ることになってしまうことを心配しています。

そこで夫Xは司法書士、自分が亡くなる前は自分がこのまま収入を得て生活をし、自分が亡くなったら妻であるYに財産を相続させ生活の安定を図ってもらいたいが、妻Yが亡くなった後は不動産について全てXの血族であるZへ遺したいことを相談しました。この場合、司法書士はどのような解決策をXに提示すればよいのでしょうか?

このような事例で、信託を活用した相続スキームを提案すべきです。具体的には、Xは公正証書遺言によって信託を設定します(これを、遺言信託といいます)。受託者をZの親族であるAとし、財産を全てAに託し、その受益者を妻Yに設定して、妻Yの生存中はAが不動産収入から妻Yの生活費等の給付を行います。そして、妻Yが死亡したことにより信託が終了するように定めて、信託の残余財産の帰属先をZに指定するという方法です。

もう少し解説しますと、通常の相続では最終的にZに承継させるには、Xの財産を承継した妻YにZに遺贈する旨の遺言を書いてもらう必要があります。しかし、それは妻Yの意思次第なので、妻Yの気持ちが変わったりするとYの親族や別の第三者に相続または遺贈されてしまう可能性があります。つまり、後継ぎ遺贈ができないため、遺言ではXの希望を満たすことができません。この場合、上記のような家族信託のスキームを使うことでXの希望を満たした財産承継をさせることが可能となります。なお、今回は遺言信託を提案しましたが、遺言ではなく遺言代用信託でも解決を図れます。つまり、夫Xが生存中あらかじめAとの間で信託契約を結んでおいて、Xの生存中は受益者をX本人として、Xの死亡後受益者を妻Yにすることも可能です(受益者連続信託)。そして、妻Yが死亡することを信託契約終了事由として残余財産の帰属先をZに指定しておくことで遺言信託と同様の効果を生じさせることが可能となります。

資産家が認知症のリスクを踏まえて相続税対策をしたい場合のスキーム

Xは多くの土地をもつ資産家です。Xには、A、B、Cの子がいますが、自分がこのまま死亡すると高額な相続税の負担を子どもに強いることになり心配しています。そこでXは相続税対策を考えて将来の納税資金を用意しようと思いました。そのため、賃貸事業で資産の有効活用、相続税の評価減の特例を検討しています。しかし、このような長期の計画の途中で自分の判断能力が低下して頓挫してしまうことを心配しています。この場合、どのようにアドバイスをしたらよいでしょうか?

例えば、Xと子Aとの間で土地にかんする信託契約を締結します。信託内容としては、受託者をA、受益者をX自身としてXが死亡した時点で信託を終了させ、信託財産の帰属先をAに指定します。他の金融資産については別途遺言でB、Cに相続させます。このように信託契約を結んでおけば、その後、Xが認知症等により判断能力がなくなった後も信託行為は継続して続けられます。つまり、AはXの承諾や意思確認をすることなく自己の責任において賃貸事業をすすめることができます。また、賃貸事業を行うことで納税資金を用意することができ、賃貸用建物を建てることで土地の評価減の特例を使うこともでき、有効な相続税対策となりました。

ここで、一つ、子Aを受託者としてはみたものの、B、Cの手前不安であれば子Aに信託監督人として司法書士等の専門家を指定しておくことができます。こうすることで適切な管理のもと賃貸事業を進めることができます。

ちなみに委託者と受益者が同じXであれば、不動産をAに信託により移転しても贈与税や不動産取得税はかかりませんので、その点も安心して提案できるスキームであるといえます。

 

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