相続対策で注意すべきことは
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。本年最後のコラムとなります。本年も1年、みなさまのご支援をいただき誠にありがとうございました。来年もより一層の法的サービスを提供していきたいと思っておりますので、司法書士かとう法務事務所をどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、今年最後の「相続・遺言のポイント」は相続対策で注意するべきポイントです。いよいよ来年から改正相続税法が施行され、基礎控除が大幅に下がります。そのため、相続税対策をしなければならないと思われている方も多くいらっしゃるかと思います。しかし、周りの方からの意見を鵜呑みにして相続対策を講じてしまうと思わぬ落とし穴があるかもしれません。今日はその辺りのことをお話しさせていただきます。
相続税対策で不動産賃貸事業を始めたけど
相続税対策として不動産賃貸事業をすすめられることがあるかと思います。賃貸事業をおこなうことによって、土地については事業用宅地となりますので、土地の評価を下げることができます。また、新しく賃貸建物を建築することで、銀行から借り入れをすることで負債をつくれます(相続税の計算の際には、相続財産から負債を引きます)。そのため、不動産会社の営業マンのすすめで安易に賃貸事業をしようと安易に考えてしまうかもしれません。しかし、このときよく考えてみてください。実際に相続税の対策はなるかもしれませんが、これから自分で賃貸事業を行うことができるのでしょうか。実際には不動産会社が手続きしてくれると思われているかもしれませんが、その賃貸事業の最終責任者はオーナーさんです。家賃を払ってくれない人がでてきた、周りに迷惑をかける人が入居してしまった、なかなか退去してくれないなど賃貸事業では様々な問題が起こる可能性があるのです。それを今から自分でやろうという気持ちと意欲があれば問題ありませんが、そのようなリスクもあるということを知っておいてほしいです。
また、現金などの流動資産を不動産などの固定資産にしてしまうと資産価値減少のリスクがあります。不動産などは地価の上がり下がりが激しいです。そのため、相続税評価以上に資産価値が下がってしまうこともあります。そうなってしまっては元も子もありません。このようなリスクもあるのです。
さらに、これらの不動産賃貸事業を引き続く人がいるのでしょうか。現金であれば相続人同士で簡単に分けることができます。しかし、不動産事業の場合は、かなりの労力が必要なります。遺された相続人が不動産事業を承継しなかった場合どうしたらよいでしょうか。結局不動産を売却したり、入居者を退去させたりで、相続人に大きな負担をかけてしまうことになります。
賃貸事業はすべきでないというわけではありません。このようなことを考えてクリアしていけば、賃貸事業はとても有効な相続税対策だと思いますのでどんどん活用してよいかと思います。目先のことだけでなく先を見通して計画することが大事だと思います。
遺言をせっかくつくったけれど
また、相続対策として遺言を作るというのもあります。これは非常に有効な相続対策ですが、たんに遺言をつくればよいというものではありません。遺言を作ってしまったばかりに相続人同士で争いに発展してしまったということも非常に多いのです。よかれと思って遺言を作っても、実は爆弾をつっているということもあるので気を付けていただければと思います。
重要なのは遺される相続人の気持ちを考えるということです。理由なくあまりに不公平な遺言を作ると争族となってしまう可能性があります。相続人同士で差をもうける場合も付言事項できちんと理由を書いておいたほうがよいでしょう。
遺言を作るときのポイントも、きちんと執行(実現)できるということを念頭におきながら作成することをお薦めします。また、遺言を作った後も、状況が変わることがあります。この場合は遺言を作り直すなど定期的に見直すことも大事です。
本日のコラムは以上となりますが、相続対策で大切なことは、すすめられるままに相続対策を講じるのではなく、一度ゆっくり立ち止まって考えて、ときには専門家に相談しながら相続対策をしていくことが重要でないかと思います。