外国人の相続登記は難しい~渉外相続登記~①

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。1月もあっというまに半分過ぎました。今の時期は新年会が多いかと思いますが体調管理だけはきっちりしていきたいと思います。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、外国人の相続登記についてお話しします。当事務所では日本の方の相続登記のご依頼をいただくことが大半ですが、たまに外国人の相続登記のご依頼をいただくこともあります。外国人が被相続人(亡くなった人)の場合は何が難しいのでしょうか。今日はこの辺について話をしていきます。

被相続人が外国人の場合

さて、被相続人が日本人以外の外国人の場合、通常の相続手続きと何が違うのでしょうか!?まずは、相続を証明する書類ですよね。日本の場合、不動産の相続登記や預貯金の解約には、相続関係書類として戸籍謄本等を提出します。しかし、戸籍制度というのは世界的に見れば特有の制度ですので、外国ではそのような登録制度を採用していない場合がほとんどです。あとは、相続に関して適用される法律はどの法律が適用されるのでしょうか!?日本の法律(民法)が適用されるのか、亡くなった方の国の法律が適用されるのか。

このように外国人が被相続人の場合は色々と検討しなければならないことが多いです。では、まずは順番に見ていきましょう。

相続の準拠法の決定

とにかく外国人が被相続人の場合に最初に検討しなければならないのは、どの法律が適用されるか、いわゆる準拠法の決定です。そこが定まっていなければ、相続人が誰なのか、どのように分けるのか、相続放棄はできるのかなど決まってこないからです。

日本の通則法第36条では、「相続は、被相続人の本国法による」と定められています。つまり、相続に関しては亡くなった方の国に法律を適用しなさいということです。では、例えば日本に不動産がある在日韓国人の方が亡くなった場合をみてみます。相続は被相続人の本国法が適用されるため、韓国の法律が適用されます。そして、韓国の国際私法では「相続は、死亡当時の被相続人の本国法による」と定められています。これによって、韓国の法律が適用されることが決定したということになります。

一方、被相続人の国籍が北朝鮮だった場合はどうでしょうか。北朝鮮の「朝鮮民主主義人民共和国対外民事関係法」の第45条では「不動産相続については相続財産がある国の方を、動産相続については被相続人の本国法を適用する」と定められています。そうすると、不動産が日本にある場合は、日本の法律が適用されることになります。日本の法律では「被相続人の本国法が適用される」と記載されていて、北朝鮮の法律によれば「日本の法律が適用される」と記載されているのです。この場合は、日本の通則法第41条に「当事者の本国法によるべき場合においてその国の法に従えば日本法によるときは、日本法による」と記載されています。これを反致といいます。つまりこの場合は不動産の所在地である日本の法律が準拠法になるということです。

ちなみに実際の実務では相続の準拠法の決定の前に被相続人の国籍の判断から入ります。特に被相続人が特別永住者の在日韓国人、朝鮮人の場合は気を付けなければなりません。これは朝鮮半島の歴史の問題が絡んできますので難しいところです。

本国の相続法の確認

準拠法が決まったらその法律に従って相続人や相続分などを確認していくことになります。ここも難しいところで、準拠法が日本法であれば問題ありませんが、本国法の場合、例えば被相続人が韓国人の場合は、韓国の民法を調べなればなりません。私もすべての国の相続法を勉強しているわけではありませんので、その辺りは一から調べて確認することになります。また、韓国の場合は被相続人の死亡日によって、法定相続人、その順位、法定相続分が異なってきます。日本と同じですよね。こうして、本国の相続法の条文を調べて実例にあてはめていく作業が必要となるのです。

それができましたら、次は遺産分割協議、必要書類の手配に入りますが、これは次回のコラムで書きます。今日はこの辺りで。

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