遺言控除!?遺言を作れば本当に相続争いは減るのか!?

こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。厳しい暑さが続いています。学生さんたちは夏休みですかね。当事務所はお盆休みなどのお休みはありませんので、ご遠慮なくご相談ください。

さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」は、最近メディアでとりあげられた遺言控除について書きます。遺言控除とは相続税等のからみで、遺言を作れば相続税の控除額が上がるといわれるものです。政府の案ということでまだ決定していることではありませんが、なぜ、遺言をつくらせようとしているのか、また遺言を作ると本当に相続争いは減るのかについて私の意見を述べたいと思います。

相続争いを減らす

遺言控除というインセンティブを作ることで、みなさんの中でも遺言を作ろうと思われる方がでてくるかもしれません。では国は、なぜこのようなインセンティブを作ってまで遺言を作らせようとしているのか。それは、相続争いを減らすためと説明しております。なぜ相続争いを減らさなければならないのか。まずは、亡くなった方の遺産をスムーズに相続人に相続させて、相続人が相続した財産を積極的に消費できるようにするためです。今の日本の貯蓄財産を一番もっているのは高齢者です。その高齢者から若い世代にスムーズに資産を承継して消費活動を活発化させようということでしょう。また、最近深刻な問題である空き家対策ということもあるでしょう。空き家が増えると火事等により周りの方に危険が及びます。その空き家が生じる一番の原因は相続です。親世代が亡くなり、子ども世代が独立しているため、親が居住している不動産には誰も住まないということがおきます。そこで空き家としてほうっておかれてしまうのです。解決するにはまず相続をスムーズに行う必要があります。とにかく相続が起こった場合は、その不動産の名義を相続人の名義にしなければ、不動産の処分等は一切できませんのでスムーズに相続できるようにすることはとても大事です。

以上のように国としては相続争いをできるだけ減らして相続により若い世代にスムーズに資産を承継し有効活用してもらおうという狙いがあるといえます。

遺言を作ると相続争いは減るのか

それでは遺言を作っておくと、本当に相続でもめることが減るのでしょうか!?結論から申し上げますと、相続争いが減るかもしれないが、逆に増えるかもしれません。私も相続案件は実務の上で多く手掛けておりますが、やはり遺言があったらここまで苦労することがなかったのにと思うことは多々あります。そのため、遺言は確かに相続争いを減らすための相続対策となります。しかし、あくまでも大事なのは「遺言をつくること」ではなく、「遺言の内容・中身」です。単に遺言だけ作っていてもそれが見当違いの内容であれば逆に争いの種をうえることになります。現に遺言を作ってしまったため、相続争いが生じてしまった例も多くみてきております。重要なことは「遺言の内容」です。相続争いがおきないように工夫して遺言を作成することが重要です。そのため、できれば遺言をつくるときはその道の専門家に相談することをおすすめします。

確かにセミナーや書籍でも遺言書の作り方など分かります。しかし、相続対策というのは100人いたら100通あると私は思います。相続は感情が表にでてきますので、これをやっておけば大丈夫という型にはめた対策はありえません。その人その人の状況を確認して、どれが一番ベストな相続対策かを検討することが大事です。そのために、実務経験豊富な専門家に相談しておくと自分の中でも整理ができるでしょう。

また、相続争いを減らす対策は、何も遺言だけではありません。生前贈与や家族信託など多くの制度を検討すべきです。そのうえでどれが一番良い対策なのかきめていくことをお薦めします。

遺言控除という考え方

私は国がこのような遺言控除という考えを示したとこは非常に良かったと思います。私自身、相続争いを減らしていくためには、まず世間の皆さんに上記のような事実を知ってもらい、行動に移してもらうことが必要だと感じてきました。国がその点を考慮して政策を示したことはよかったです。しかし、遺言控除という考え方により工夫が必要のように思います。まずは、遺言控除というのは相続税の納税が必要な世帯でしかインセンティブが働きません。相続税の納税が必要な家庭はまだまだすく兄といえます。また、統計的に家庭裁判所で遺産分割の調停や審判の対象となっているのは、財産がそこまで多くない世帯が多いです。財産がそれほど多くないからこそ争いが生じるのです(自宅不動産とわずかな預金など)。相続税をインセンティブにすると限られた範囲の方にしか有効になりませんので、その辺、考え方に工夫が必要になるかと思います。

そうはいっても私自身、現時点ではより良い案も思い浮かびません。じっくり考えてまたコラムで触れようと思います。

 

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