遺産相続争いは富裕層ではなく一般家庭の方がもめる!?
こんにちは、横浜の司法書士の加藤隆史です。10月も終わりで今年も残り2か月です。慌ただしくなる時期ですが、体調に気を付けて乗り切っていきましょう。
さて、本日のコラム「相続・遺言のポイント」のテーマは、遺産相続争いが起こるのは富裕層ではなく一般家庭である!?という内容です。今、「遺産争族」というテレビドラマが放映されていますが、そこでも遺産相続争いが描かれているようです(私は実際にドラマをみていませんが、この先機会があれば見てみます)。テレビドラマになるくらい今注目されている遺産相続、特に遺産相続争い。「うちは相続争いなんて関係ない」、「争うほど財産がない」という風におっしゃる方も多いですが、実はそのような方が一番あぶないかもしれませんよ!?
遺産5,000万円以下の相続争いが多い
上記のとおり、「うちには遺産がほとんどないから大丈夫」という方が結構いらっしゃいます。しかし、統計的にみると相続争いの8割近くが、遺産総額5,000万円以内の家庭で起きているのです。また、全体の3割以上の争いが1,000万円以下の家庭で起きているのです。意外でしょうか!?富裕層こそが遺産相続で争うイメージですよね。ドラマでも富裕層設定になっていますし。しかし、遺産が多くない家庭の方が相続争いに発展する可能性が高いのです(実際には富裕層よりも一般家庭の方が割合が多いのでそのような統計になっていると思うのですが)。なぜ、遺産が少ない方がもめるのでしょうか!?
一般家庭の遺産は自宅不動産と少額な預貯金
それは、一般家庭の遺産が自宅不動産と少額な預貯金という構成が多いからです。富裕層では現金も多いことから相続人同士でうまく分けることができます。しかし、一般家庭の遺産の内訳は自宅不動産と少額な預貯金であることから、不動産を相続した方が遺産の大半を相続することになります。そのため他の相続人が法定相続分に満たないわずかな金額でしか相続することができず、不満がたまって争いになるケースが多いと考えられます。
自宅不動産はそこに実際に住んでいる相続人もいる可能性があるので売却して現金を分けることもできません。かといって、自宅不動産を相続した相続人が、自腹で法定相続分に相当する現金を用意することも難しいです。自宅不動産を相続する相続人は同居していた親の介護などをしてることを言い分にして、逆に他の相続人は法律で決められた相続分だからと反論します。なかなか結論がでず、結局家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをするという流れで進んでいきます。
遺産相続で揉めないために
そこで、遺産相続で揉めないために事前に相続対策を行う必要があります。遺産相続争いを予防する一番の対策は、やはり遺言だと思います。遺言というのは、親の最後のメッセージですので、その思いを子どもに伝えることが効果があると思います。そのため、遺言には財産の分配だけではなく法律効果がでない「付言事項」、つまり家族あてのメッセージを書いておくことが必要です。遺産を分けた理由や、生前からの想い、これから家族にしてもらいたい希望などをもりこんで遺言書を作ることが大事です。
ただ、遺言は遺産を遺す親が行うものです。子どもの立場から親に遺言を作ってもらいたいのであれば、日ごろから親とコミュニケーションをとっておくことが大切です。いきなり親に遺言書を作ってほしいといっても無理な話です。親とのコミュニケーションを日ごろから続けて、家族全員で話し合っておく、このようなことが遺産相続争いを防ぐ一番の方法だと思います。